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TORENDIA

「百日物語」あとがき

本文約1,300字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

西日本新聞に百回連載された随筆百篇を収める。著者がアメリカ滞在中に航空便で原稿を送り届けた執筆の経緯や、敗戦から十年を経て整いゆく日本の社会に対する所感を綴る。各地の旅で見聞きした風俗や人情、多様な人々の営みを通じて、人間が持つ底の善意に触れる。珍しい話や変わった話を気負わず集め、毒にも薬にもならないような、日常のささやかな出来事や見聞をありのままに描き出すことを試みた一冊である。

中谷宇吉郎

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この『百日物語』は、昨年の七月から九月にかけて、『西日本新聞』に連載したものである。そのうち、種が外に書いたものと重複した分を、五六篇だけ差しかえた。しかし大部分は、掲載の順序のまま、この本に納めた。

書きかけて間もなく土佐へ行き、歸ってすぐアメリカの學會に出かけたので、大半は、旅行中に書いたものである。最終回のところで、一寸觸れておいたが、アメリカから、航空便で毎日或は隔日くらいに原稿を送って、それが一回の故障もなく間に合ったのであるから、世界もずいぶん狹くなったものである。

狹くなったというのは、飛行機が速くなったせいばかりではない。それが毎日精確に運行されている點が、大切なのである。それには機體やエンジンの整備とか、地上の施設とか、通信連絡とか、萬般のことが、揃っていなければならない。そして、それよりも大切なことは、社會に組織と秩序とが、きちんと立っていることである。敗戰後十年のうちに、日本もずいぶん整って來たものと感じている。

お蔭で、方々の土地も見られ、又いろいろな人にも會うことが出來、有難いことと感謝している。世の中は廣大なもので、いろいろな人が、いろいろなことをしている。風俗もちがい、人情もちがうが、人間というものは、皆底には善意をもっている、という氣が、この頃して來ている。この百回の隨筆は、そういういろいろな話を集めたものである。

『新しい國』は、この前にアメリカへ行った時に、『暮しの手帳』や『心』に送った通信を集めたものである。昭和二十七年から二十九年にかけて、二年あまり、家族をつれてアメリカへ行き、シカゴ郊外のウィネツカという住宅區域に住んだ。その時に書いた見聞記の大部分は、既に『知られざるアメリカ』に收めたが、この分が殘っていたので、本書の中に入れておくことにした。『百日物語』の後半とつながりがあるので、丁度よい場所のように思われたからである。

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