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TORENDIA

美男子と煙草

本文約4,500字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

古い文学論を盾にする先輩作家たちに苦しめられ、孤独に抗う主人公は、雑誌社の企画で上野の地下道へ赴くことになる。奇妙なウイスキイを飲み酔った勢いで現場を訪れた主人公は、浮浪者たちの様子から美男子の宿命やどん底で煙草を求める人間の心理を考察する。公園で浮浪児と交流した主人公は、撮影された写真を通じて自身の姿を浮浪者と重ね合わせ、社会の底辺へ落ちていく恐怖と生への実感を複雑な心境で綴る。

太宰治

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🎧 美男子と煙草 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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私は、独りで、きょうまでたたかって来たつもりですが、何だかどうにも負けそうで、心細くてたまらなくなりました。けれども、まさか、いままで軽蔑しつづけて来た者たちに、どうか仲間にいれて下さい、私が悪うございました、と今さら頼む事も出来ません。私は、やっぱり独りで、下等な酒など飲みながら、私のたたかいを、たたかい続けるよりほか無いんです。

私のたたかい。それは、一言[#「一言」は底本では「一事」]で言えば、古いものとのたたかいでした。ありきたりの気取りに対するたたかいです。見えすいたお体裁に対するたたかいです。ケチくさい事、ケチくさい者へのたたかいです。

私は、エホバにだって誓って言えます。私は、そのたたかいの為に、自分の持ち物全部を失いました。そうして、やはり私は独りで、いつも酒を飲まずには居られない気持で、そうして、どうやら、負けそうになって来ました。

古い者は、意地が悪い。何のかのと、陳腐きわまる文学論だか、芸術論だか、恥かしげも無く並べやがって、以て新しい必死の発芽を踏みにじり、しかも、その自分の罪悪に一向お気づきになっておらない様子なんだから、恐れいります。押せども、ひけども、動きやしません。ただもう、命が惜しくて、金が惜しくて、そうして、出世して妻子をよろこばせたくて、そのために徒党を組んで、やたらと仲間ぼめして、所謂一致団結して孤影の者をいじめます。

私は、負けそうになりました。

先日、或るところで、下等な酒を飲んでいたら、そこへ年寄りの文学者が三人はいって来て、私がそのひとたちとは知合いでも何でも無いのに、いきなり私を取りかこみ、ひどくだらしない酔い方をして、私の小説に就いて全く見当ちがいの悪口を言うのでした。私は、いくら酒を飲んでも、乱れるのは大きらいのたちですから、その悪口も笑って聞き流していましたが、家へ帰って、おそい夕ごはんを食べながら、あまり口惜しくて、ぐしゃと嗚咽が出て、とまらなくなり、お茶碗も箸も、手放して、おいおい男泣きに泣いてしまって、お給仕していた女房に向い、

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