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TORENDIA

中味と形式

本文約15,500字 ・ 読了時間 約32分

あらすじ(AIが作成しました)

堺での講演会に招かれた著者が、社会の変動とそれに対応する形式の在り方を論じる。内面生活の内容が明治という時代に合わせて変化する中で、従来の古い型を押し付け続けることは矛盾を招くと指摘する。支配者や教育者が相手の心理に寄り添い、現代の実情に則した新しい形式を模索することの必要性を説き、形式と内容の調和こそが社会を円滑に動かす鍵であると結論付ける。

夏目漱石

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私はこの地方にいるものではありません、東京の方に平生住っております。今度大阪の社の方で講演会を諸所で開きますについて、助勢をしろという命令――だか通知だか依頼だかとにかく催しに参加しなければならないような相談を受けました。それでわざわざ出て参りました。もっともこの堺だけで御話をしてすぐ東京表へ立ち帰るという訳でもないので、現に明石の方へ行きましたり、和歌山の方へ参りましたり、明日はまた大阪でやる手順になっております。無論話すことさえあれば、どこへ行って何をやっても差支ないはずですが、暑中の際そうそう身体も続きませぬから、好い加減のところで断りたいと思っております。しかしこの堺は当初からの約束で是非何か講話をすべきはずになっておりましたから私の方もそれは覚悟の上で参りました。したがってしっかりした御話らしい御話をしなければならない訳でありますが、どうもそう旨く行かないからはなはだ御気の毒です。ただいまは高原君が樺太旅行談つけたり海豹島などの話をされましたが実地の見聞談で誠に有益でもあり、かつ面白く聴いておりました。私のは諸君に興味または利益を与えるという点において、とても高原君ほどに参りませぬ。高原君は御覧の通りフロックコートを着ておりましたが、私はこの通り背広で御免蒙るような訳で、御話の面白さもまたこの服装の相違くらい懸隔しているかも知れませんから、まずその辺のところと思って辛抱してお聴きを願います。高原君はしきりに聴衆諸君に向って厭になったら遠慮なく途中で御帰りなさいと云われたようですが私は厭になっても是非聴いていていただきたいので、その代り高原君ほど長くはやりません。この暑いのにそう長くやっては何だか脳貧血でも起しそうで危険ですからできるだけ縮めてさっさと片づけますから、その間は帰らずに、暑くても我慢をして、終った時に拍手喝采をして、そうしてめでたく閉会をして下さい。

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