第五氷河期
本文約14,100字 ・ 読了時間 約29分
あらすじ(AIが作成しました)
氷河狂と揶揄される北見徹太郎博士は、第五氷河期の襲来を予言し警視庁で警告を繰り返す。科学者たちは精神病と断定するが、やがて地球規模の寒冷化が始まり、建築物が崩壊し人類は危機に瀕する。北見は生存者と共に地底へ避難し、噴出物で太陽熱が遮断された世界で人類の存続を懸けた闘いに身を投じる。予測が適中したにもかかわらず、博士はさらなる過酷な生存競争への深い憂慮を抱き続ける。
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氷河狂の老博士
「氷河狂」といえば、誰も知らない者はない北見徹太郎博士は、ついに警視庁へ出頭を命ぜられた。
老博士は、銀髪銀髯の中から、血色のいい頬を耀かせ、調室の壊れかかった椅子に傲然と反り身になり、ひとり鼻をくんくん鳴らしていた。
「うむ、実にけしからん。わしをわざわざ呼んでおきながら、いつまで待たせるのか。わしを一分間、むだに過ごさせるということはやがて一千人の人間、いや一万人の人間を凍結させることになるのだ。ばかな話じゃ」
そういって老博士は、またもや、鼻をくんくん鳴らした。
午後の陽ざしが、ただ一つ西側にあいた窓から入ってきて、破れたリノリウムの上に、鉄格子の影をおとしている。冬とはいえ、今年はいやに暖い日がつづく。
扉が、乱暴に開いて、警官が、ぬっと顔をさし入れた。彼は、博士の姿を見ると、後をふりかえって、うなずいた。
博士は、椅子からとび上がり、
「おい、こら。いつまで待たせるのじゃ。総監にそういえ」
と、人もなげな口をきいた。
そのとき、入口から、力士にしてもはずかしくない巨漢が現われた。きちんとした制服に身をかためた植松総監だった。そのあとから、背広服の人物が三、四人。
「やあ、北見博士。お待たせいたしました。なにしろ、今日は、つぎつぎに急ぎの仕事が押しかけたもので、たいへん遅くなって申し訳ありません」
総監は、人ざわりのいい言葉で、老博士の機嫌をとった。
「今日は、わしをどうしようというのかな。わしも、あなた以上に忙しい身の上だから、早いところ用事を片づけてもらいましょう」
「いや、博士、例の氷河の件ですがね。今日は、皆で博士の話を承ろうというので、集まってきたんです。さあ、皆さん、そこらへ席をとってください」
北見博士は、うさんくさそうに、総監についてきた一同の顔を見まわした。
「この連中は、何者じゃな」
「皆、本庁関係の者ですよ。博士の氷河の話に、たいへん興味をもっている人たちです。――博士、氷河期が近くこの地球に襲来するというのは、本当ですか」