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TORENDIA

半七捕物帳

本文約16,700字 ・ 読了時間 約34分

あらすじ(AIが作成しました)

明治三十一年、老人が江戸川にまつわる過去の怪談を語り出す。文久三年の江戸、御留川として魚類が厳重に保護されていた小石川の江戸川で、禁を破り鯉を狙う者たちがいた。その釣りを巡る不穏な動きから、ある草履屋の亭主が失踪する騒動が持ち上がる。半七老人は、無量寺門前の草履屋の女房が夢のお告げを機に巻き込まれた、鯉の密漁とそれに連なる凄惨な事件の全貌を語り聞かせる。

岡本綺堂

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一

「むかし者のお話はとかく前置きが長いので、今の若い方たちには小焦れったいかも知れませんが、話す方の身になると、やはり詳しく説明してかからないと何だか自分の気が済まないというわけですから、何も因果、まあ我慢してお聴きください」

半七老人は例の調子で笑いながら話し出した。それは明治三十一年の十月、秋の雨が昼間からさびしく降りつづいて、かつてこの老人から聴かされた「津の国屋」の怪談が思い出されるような宵のことであった。今夜のような晩には又なにか怪談を聴かしてくれませんかと、私がいつもの通りに無遠慮に強請りはじめると、老人はすこしく首をひねって考えた後に、面白いか面白くないか知りませんけれども、まあ、こんな話はどうでしょうね、とおもむろに口を切った。

その前置きが初めの通りである。

「いや、焦れったいどころじゃあありません。なるたけ詳しく説明を加えていただきたいのです」と、わたしは答えた。「それでないと、まったく私たちにはよく判らないことがありますから」

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