本文へ移動
TORENDIA

中国怪奇小説集

本文約12,000字 ・ 読了時間 約25分

あらすじ(AIが作成しました)

唐代を中心に伝承される怪異譚を精選した集録。美しい妻を盗まれた将軍が巨大な白猿の正体を暴く物語や、木牛や木人を用いて蕎麦を生産する不思議な女店主の顛末、孝行を装い人を欺く者など、超自然的な現象や奇怪な術が登場する様々な説話を紹介する。事実の有無を問わず物語としての面白さを重視し、古来語り継がれてきた名高い怪奇伝奇の世界を綴る。

岡本綺堂

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 15

第五の男は語る。

「唯今は『酉陽雑爼』と『宣室志』のお話がありました。そこで、わたくしには其の拾遺といったような意味で、唐代の怪談総まくりのようなものを話せという御注文ですが、これはなかなか大変でございます。とても短い時間に出来ることではありません。勿論、著名の物を少々ばかり紹介いたすに過ぎないと御承知ください。就きましては、まず『白猿伝』を申し上げます。この作者の名は伝わって居りません。唐に欧陽詢という大学者がありまして、後に渤海男に封ぜられましたが、この人の顔が猿に似ているというので、或る人がいたずらにこんな伝奇を創作したのであって、本当に有った事ではないという説があります。しかし〈志怪の書〉について、その事実の有無を論議するのは、無用の弁に近いかとも思われます。ともかくも古来有名な物になって居りまして、かの頼光の大江山入りなども恐らくこれが粉本であろうと思われますから、事実の有無を問わず、ここに紹介することに致します。

そのほかには、原化記、朝野僉載、博異記、伝奇、広異記、幻異志などから、面白そうな話を選んで申し上げたいと存じます。これらもみな有名の著作でありまして、一つ一つ独立して紹介するの価値があるのでございますが、あとがつかえて居りますから、そのなかで特色のあるお話を幾つか拾い出すにとどめて置きます。右あらかじめお含み置きください」

白猿伝

梁(六朝)の大同の末年、平南将軍藺欽をつかわして南方を征討せしめた。その軍は桂林に至って、李師古と陳徹を撃破した。別将の欧陽は各地を攻略して長楽に至り、ことごとく諸洞の敵をたいらげて、深く険阻の地に入り込んだ。

欧陽の妻は白面細腰、世に優れたる美人であったので、部下の者は彼に注意した。

「将軍はなぜ麗人を同道して、こんな蕃地へ踏み込んでお出でになったのです。ここらの山の神は若い女をぬすむといいます。殊に美しい人はあぶのうございますから、よく気をお付けにならなければいけません」

岡本綺堂の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本