女王
本文約1,900字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
村で古くから伝わる「愛の歌」は、トムちゃんのお母さんによって作曲され、祭りの合奏曲として子供たちに親しまれている。八幡様の祭りが近づき、山車の準備を進める子供たちは、村の代表である「女王」を務めるトムちゃんの姿が見えないことを案じる。病気で伏せる母親の看病をするトムちゃんのもとへ、子供たちは摘み取った野花で作った花輪を携えて迎えに行く。女王の辞退を申し出るトムちゃんと、その状況を心配する子供たちの姿を夕暮れの中で描く。
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何時、誰が創つたのか、村にはずつと古くから次々に伝へられてゐる歌詞がありました。村の母親達はそれをねんねこ歌のやうにして小さな子供たちに歌つてきかせてゐるのでした。
トムちやんのお母さまが学校に勤めるやうになつてから、それを作曲して学校の児童達に歌はせるやうにしました。歌は「愛の歌」と名づけられました。今ではその歌がだんだんに伝へられて、この郡の小学校では何処へ行つても歌はないところはないやうになつてゐました。
村のお祭に八幡様の森で児童達が合奏するこの歌は、どんなに村人の心を和げ又慰めたことでせう。
娘姿で 駒鳥は
糸紡き車で
糸紡いた
シヤラシヤラ ビンビン
糸紡いた
糸は何糸 愛の糸
愛の糸より
糸はない
シヤラシヤラ ビンビン
糸はない
森の少女も 駒鳥の
糸紡き車で
糸紡いた
シヤラシヤラ ビンビン
糸紡いた
歌を唄ひば 愛の歌
愛の歌より
歌はない
シヤラシヤラ ビンビン
歌はない
村祭の日が近づいてまゐりました。子供達はお宮の森の、とある広ツぱへ集つて、いろいろとお祭のお準備をしてゐました。花笠を造つたり、小さな山車を慥へたり、山車の屋根を飾る挿花を考へたりして、キヤツキヤツと騒いで居るのでした。
「女王はどうしたの、遅いなア」
「やつぱり先生が悪いんだツか」
そんな話が子供達の間に交されると、皆が忙しさうな手を休めて、瞳を話の中心点に集めるのでした。
「葛原先生、学校随分長く休んだツせ」
「病気、悪いのかなア」
「悪いんさ。でなきやトムちやんと疾に来るもの」
「みんなで行つてみよか」
「ウム、それ好いや。女王が居んぢや、ちつとも面白く無え」
「花輪が出来たんか」
「まだ野菊が足りねえ……トムちやん処へ行く前にみんなで野原へ寄て行かう」
「ああ、それがいいや。行こ、行かう」
村の少年少女は造りかけた山車や花笠や造花をお宮の拝殿に蔵へ込んで、ゾロゾロと石の階段を野原の方へと降りて行くのでした。