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TORENDIA

名娼満月

本文約18,800字 ・ 読了時間 約38分

あらすじ(AIが作成しました)

京都島原の松本楼に住まう美しき花魁、満月。彼女の美貌に魅せられ、金丸長者、若侍の青山銀之丞、商人の千六という三人の男が、狂おしいほどの情熱と競争を繰り広げる。銀之丞は盗みに手を染め、千六は身代を使い果たすが、やがて再会した二人は満月の最期を知る。物語は、彼女への思慕を抱き続け、仏門に入った三人の姿を通して、色欲と栄枯盛衰の儚さを描く。

夢野久作

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人皇百十六代桃園天皇の御治世。徳川中興の名将軍吉宗公の後を受けた天下泰平の真盛り。九代家重公の宝暦の初めっ方。京都の島原で一と云われる松本楼に満月という花魁が居た。五歳の年に重病の両親の薬代に代えられた松本楼の子飼いの娘ながら、名前の通り満月をそのままの美くしさ。花ならば咲きも残らず散りも初めぬ十九の春という評判が、日本国中津々浦々までも伝わって、毎年三月の花の頃になると満月の道中姿を見るために洛中洛外の宿屋が、お上りさんで一パイになる。本願寺様のお会式にも負けぬという、それは大層な評判であった。

その頃、満月に三人の嫖客が附いていた。

一人は越後から京都に乗出して、嵯峨野の片ほとりに豪奢な邸宅を構え、京、大阪の美人を漁りまわしていた金丸長者と呼ばれる半老人であった。はからずもこの満月に狃染んでからというもの、曲りかけている腰を無理に引伸ばし、薄い白髪鬢を墨に染め、可笑しい程派手な衣裳好みをして、若殿原に先をかけられまいという心遣いや金づかいに糸目を附けず。日本中を真半分に割って東の方に在るものは皆、満月に買うてやりたいほどの意気組であった。

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