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TORENDIA

電車の混雑について

本文約7,600字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

東京市内電車の利用において、人々が先を争って最初の混雑する電車に乗り込む様子を観察し、その現象を科学的・数理的な観点から分析する随筆。電車が混雑する背景には、乗客が先を争うことで停車時間が延び、さらに混雑が加速するという仕組みが存在することを指摘する。著者は、混雑のピークを避け、あえて次の空いた電車を待つことが、身心の疲労軽減や効率の面で有益であることを論じ、満員電車を好む人々の心理や社会的な性質について考察する。

寺田寅彦

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🎧 電車の混雑について / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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満員電車のつり皮にすがって、押され突かれ、もまれ、踏まれるのは、多少でも亀裂の入った肉体と、そのために薄弱になっている神経との所有者にとっては、ほとんど堪え難い苛責である。その影響は単にその場限りでなくて、下車した後の数時間後までも継続する。それで近年難儀な慢性の病気にかかって以来、私は満員電車には乗らない事に、すいた電車にばかり乗る事に決めて、それを実行している。

必ずすいた電車に乗るために採るべき方法はきわめて平凡で簡単である。それはすいた電車の来るまで、気長く待つという方法である。

電車の最も混雑する時間は線路と方向によってだいたい一定しているようである。このような特別な時間だと、いくら待ってもなかなかすいた電車はなさそうに思われるが、そういう時刻でも、気長く待っているうちには、まれに一台ぐらいはかなりに楽なのが回って来るのである。これは不思議なようであるが、実は不思議でもなんでもない、当然な理由があっての事である。この理由に気のついたのは、しかしほんの近ごろで、それまでは単に一つの実験的事実として認識し、利用していただけであった。

なんと言ってもあまり混雑のはげしい時刻には、来る電車も来る電車も、普通の意味の満員は通り越した特別の超越的満員であるが、それでも停留所に立って、ものの十分か十五分も観察していると、相次いで来る車の満員の程度におのずからな一定の律動のある事に気がつく。六七台も待つ間には、必ず満員の各種の変化の相の循環するのを認める事ができる。

このような律動の最も鮮明に認められるのは、それほど極端には混雑しない、まず言わば中等程度の混雑を示す時刻においてである。

そういう時刻に、試みにある一つの停留所に立って見ると、いつでもほとんどきまったように、次のような週期的の現象が認められる。

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