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TORENDIA

映画と生理

本文約3,200字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

研究に没頭し緊張状態が続く学者の神経の異常に対し、映画鑑賞が特効薬となり得る可能性を綴る。脳の特定の活動が固定観念を生むのと対照的に、映画の刺激が異なる部位を活性化させ、心理的・生理的な緊張の弛緩や解消をもたらす様子を考察する。さらに、銀幕上の映像が老年の心身に与える影響や、若返りへの作用について自身の経験をもとに分析し、映画が持つ未知の生理的効果というテーマを論じる。

寺田寅彦

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🎧 映画と生理 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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ある科学者で、勇猛に仕事をする精力家としてまた学界を圧迫する権威者として有名な人がある若いモダーンなお弟子に「映画なんか見ると頭が柔らかくなるからいかん」と言って訓戒したそうである。この「頭が柔らかくなる」というのはもちろん譬喩的の言葉であるには相違ないが、しかしその言った先生の意味が正確にどういう内容のものであったか、当人に聞いてみなければ結局ほんとうのことはわからない。ただその先生の平生の勉強ぶりから推して考えてみると、映画の享楽の影響から自然学問以外の人間的なことに興味を引かれるようになり、肝心の学問の研究に没頭するに必要な緊張状態が弛緩すると困るということを、こういう独特な言葉で言い現わしたのではないかと思われる。

この訓戒はこの学者の平生懐抱するような人生哲学からすればきわめて当然な訓戒として受け取られるのであるが、これとは少しちがった種類の哲学の持ち主であるところの他の学者に言わせると、それと反対に「映画でも見ないと頭がかたくなっていけないから時々見るほうがいい」とも言われうるからおもしろいのである。

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