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TORENDIA

「夜明け前」についての私信

本文約2,500字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

島崎藤村の『夜明け前』について、作者の文学的本質と歴史認識を論じる。明治維新を歴史の転換点として捉え、古い時代の中にある新しい活力を描こうとした作家の意図を分析する。また、主人公・半蔵の平田国学への傾倒が当時の政権争いの中でいかに利用され、大衆の犠牲を生んだかという歴史的視点から、作品が持つ窮屈な文章の美学と、その背後にある農民的性格の粘着力や思想的限界について考察する。

宮本百合子

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(前略)

藤村がフランスにいた間に、十九世紀というものを世界的な感情で感得し、日本の十九世紀というものを描きたく思ったということ。そして、十九世紀を維新後と徳川時代との区切りで見ず、昔をただ反動保守の力としてばかり見ず、その中に明治を生んだもの、その中に新しい活力をひそませていたものを描きたいということが、なかで読んだ藤村文学読本のどこかにあったパリでの感想中に書かれていました。このことは大変私には面白く思われた。

世界の十九世紀という時のうちに日本のその時代をおいて観察しようとする大きい規模・感覚、並に新しいジェネレーションに対して古いものが本質的にただ古いだけではないのだぞというところを押し出さずにはいられぬ藤村自身としての心持を感じ、その点を私は面白く感じました。

「夜明け前」は或る面から言えば一種の歴史叙事詩であるが、主観的に藤村は歴史の或る時代の或る役割をヘンスーの土地のかくの如きものも負っているということを(即ちマルクシストでない自分だって時代の動きに負わされているものがあるという心持を)たて糸としていることはたしかですね。だから貴方も書いていられるように、客観的に描かれているようで、全篇実に主観的である。このことは「夜明け前」の文章、描写の方法――貴方が「読み辛い苦汁のような」と言っていられる文章にもあらわれていると思います。

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