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TORENDIA

フロレンス・ナイチンゲールの生涯

本文約10,300字 ・ 読了時間 約21分

あらすじ(AIが作成しました)

十九世紀のイギリスに生まれたフロレンス・ナイチンゲールは、上流階級の因習に抗い、社会で意義ある活動に従事することを強く願う。看護婦として生きる決意を固めた彼女は、クリミヤ戦争の混乱極まる陸軍病院でその非凡な組織力と行動力を発揮する。本書は、時に経験論に固執し宗教的な思索に耽りながらも、不屈の精神で自らの生涯を貫いた一人の女性の情熱と苦悩、そしてその実像を多角的な視点から考察し、綴る。

宮本百合子

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慈悲の女神、天使として、フロレンス・ナイチンゲールは生きているうちから、なかば伝説につつまれた存在であった。後代になれば聖女めいた色彩は一層濃くされて、天上のものが人間界の呻吟のなかへあまくだった姿のように語られ描かれているが、フロレンス・ナイチンゲールの永い現実の生活は、はたしてそんな慈悲の香炉から立ちのぼる匂いのようなものであったろうか。人間のために何事かをなし得た人々は、今も昔もきわめて人間らしさの激しくきつい人々、その情熱も智力も意志もひとしおつよい人々ではなかったのだろうか。

フロレンス・ナイチンゲールは一八二〇年イギリスの由緒ある上流の娘として誕生した。一八二〇年といえば日本では徳川時代の文政三年、一茶だの塙保己一だのという人が活躍した時代、イギリスは植民地インドからの富でますます豊かになりながら、一方にうめることのできない貧富の差を示して来たヴィクトーリア女皇の時代である。

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