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TORENDIA

ものわかりよさ

本文約5,700字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

昔から女性に求められてきた「ものわかりのよさ」という美徳について論じる。この概念は発見や創造ではなく、現実に適応し従属するための術として機能してきた。特に現代の若い女性は、自立して働きたいという希望と、世間が押し付ける定型的な女性像との間で葛藤を抱えている。本書は、表面的な適応に甘んじるのではなく、矛盾する社会の要請を批判的に理解し、自身の成長の糧へと昇華させる新たな精神のあり方を提唱する。

宮本百合子

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🎧 ものわかりよさ / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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昔から女にもとめられている日常の美徳の一つに、ものわかりのよさ、ということがある。

とかく女が狭い生活にとじこめられていたために、人生の視野がせばまって、我執だの偏執だのが女につきものの気質のように見られた一方の、その対蹠的な要求とでもいうべきものだったのかもしれない。やきもちをやかないこと、そして物わかりのよいこと。その二つが身に備わっているとなれば、賢い女のうちに入れることはまぎれもなかった。

女にものわかりのよさをもとめられたのは、昔だけのことだろうか。男の世界によい意味でも目の上の瘤にならないように、わるい意味でも邪魔っけにならないように、女のものわかりよさが求められたのは、昔ばかりのことだろうか。

ぐるりと生活を見わたすと、今日でもやはり、女に向かってこの同じものわかりよさが何かにつけもち出されていると思う。君はわからない女だ、という言葉の内容は、君はわからない男だというと同じ内容ではいわれていないのが実際だと思う。わからない男だ、というとき、その言葉には相手が人生的なことかあるいは職業的なことか、何はともあれ原理的な点で正当な理解をもっていないという意味がこめられている。わからない女だね、という表現は、いつの場合も決してそれほど原理的なことの判断についていわれるのではない。むしろ日常の一寸したこと、男の側からいえば、そういうものだよ、というようなとき、それがすらりとうなずけない女の心を、わからない女と表現することの方が多い。

しずかに考えてみると、ものわかりのいいということと、物の理解が正しくて深いということは全く別である。今日の若い世代のものは、誰しも人間としてより正しく深く自分の一生についても考えわかって生きてゆきたい慾望をもっているし、同時に、そのように考える精神のよりどころについてある自信なさにおかれてもいる。そのために、本当に考えて責任をもって生きたいという心持が、ある場合は、女はものわかりよくなくてはならない、というどこからかの声に動揺させられたりしがちだと思われる。

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