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TORENDIA

たにしの出世

本文約4,700字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

水神に祈り、たにしとして生まれた子が、人並外れた利口さで長者屋敷の仕事を手伝い、その器量を買われて長者の娘を妻に迎える。ある日、妻が参拝中に姿を消したたにしを探し求めるうち、封じられていた本来の姿である若者が現れる。人間に戻ったかつてのたにしは、妻と共に幸せな一生を送る。水神の申し子として生まれた異形の存在が、真実の愛と献身によって真の姿を取り戻し、出世を果たすまでの物語を描く。

楠山正雄

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🎧 たにしの出世 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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一

むかしあるところに、田を持って、畑を持って、屋敷を持って、倉を持って、なにひとつ足りないというもののない、たいへんお金持ちのお百姓がありました。それで村いちばんの長者とよばれて、みんなからうらやましがられていました。

この長者とおなじ村に、これはまた持っているものといっては、ふるいすきとくわとかまがいっちょうずつあるばかりという、たいへん貧乏なお百姓の夫婦がありました。長者の田を借りて、お米やひえをつくって、その日その日のかすかなくらしを立てていました。

夫婦はだんだん年をとって、毎日はたらくのが苦しくなりました。それでもじぶんたちの跡をついで、代りにはたらいてくれる子どもがないので、あいかわらず夏も冬もなしに、水田のなかにつかって、ひるやぶよにくわれながら汗水たらしてはたらいて、それでもひまがあると、水に縁のある神様だというので、水神さまのお社に、夫婦しておまいりしては、

「神さま、神さま、どうぞ子どもをひとりおさずけくださいまし。子どもでさえあれば、かえるの子でも、つぶの子でもよろしゅうございます」

といって、一生けんめいいのりました。

するとある日、きゅうにおかみさんは、からだじゅうがむずむずして、赤ちゃんが生みたくなりました。

「そらこそ水神さまのごりやくだぞ。さあ、早く神だなにお燈明を上げないか」

こういってさわいでいるうちに、おぎゃあともいわずに赤ちゃんが、それこそころりと、往来さきに、まるい石ころがころげ出すようにして生まれました。

まったくの話、この子は、石ころのようにちいさく、まるっこいので、つぶ、つぶとよばれている、たにしの子であったのです。

「つぶの子でもと申しあげたら、ほんとうに水神さまがたにしの子をくださった」

夫婦はこういって、でも、水神さまのお申し子だからというので、ちいさなたにしの子をおわんに入れて、水を入れて、そのなかでだいじにそだてました。

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