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TORENDIA

百銭

本文約2,900字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

生活のために夜なべで細かい細工物を描く洋画家が、来月入る金で愛する女のために靴や着物を買う計画を語る。その純粋な喜びに触れた語り手は、金というものの不思議な力について思いを馳せる。そこから、かつて祖母からもらった一円を母の手で百銭の小銭に変えてもらい、暗い茶室で心ゆくまで遊んだ幼い頃の記憶を辿る。金が持つ独特な意味と、記憶に刻まれた個人的な情景を淡々と綴る。

宮本百合子

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🎧 百銭 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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或る洋画家のところへ、来月お金が入ることになった。ふだんその人は真面目に勉強しているのだが、或る理由からお金がちっともとれず、一緒に暮している女のひとと生活する必要のためには、夜、餉台の上まで低く電燈を引っぱり下してその下で、細かい細かい面相で芥子粒位のものを描く仕事をしなければならない。細かいその仕事は金粉や銀粉をつかってする仕事だから、たった一つの電燈の光でも四畳半の穢い部屋の中では随分美しく、立派に光りさえもするが、何にしろそういう仕事で食って行かなければならない。その中へ、来月纏ったお金が入る。お金が入ったら、何と何と買おうと思っているかということを、その人はそれは楽しげに話した。

「先ずこのひとに靴を一足買ってやってね、羽織も拵えようっていうんです――着物なんぞ、まるでないんですからね。私も羽織は一枚いる。――それからオーヴァが欲しいっていうけれどとても駄目だから、一つ布地で買おうっていっているんです――ね、自分で縫うね」

「もち! 縫うわ、×子うまいもんよ」

「ハハハ、手袋はもう買ったからいいね」

「ええ結構!」

「――私は貧乏になれて一人だと平気で金のことなんぞ忘れているんだが、このひとが来てから少しそんなことも考えなければならなくなった」

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