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入選小説「毒」について

本文約470字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

梅毒に苦しむ女を描いた入選作「毒」を、素直で引きつける筆致と評価しつつ、疾病を階級的視点から切り離して描く風潮への警戒を促す宮本百合子の選評。

宮本百合子

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🎧 入選小説「毒」について / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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この作品は「新聞配達夫」とは又別の意味で一気に終りまで読ませ、しかもなかなかひきつけるところのある作品である。病苦をめぐる良人の感情、妻の感情など素直にひたむきに描れているし、淫売屋での二人の女の会話のところなども自然であるために、すぐその前の、考えて見ればグロテスクな場面もいやらしくなくなり、情がうつている。

そこまでは各選者とも一致した意見であったが、同時に、この作品を特にすぐれたものとして第一位に推すことは不適当であるという意見にも皆が賛成であった。そこに、この作の作者も読者も深く考えなければならない点があろうと思う。

作者は素直に、ただ一筋に梅毒の悲惨にひしがれた女を描いて或る効果を示しているが、この社会的疾病に対する考えかた、感情は、どちらかと云えばごく低いものである。

島木健作の「癩」「盲目」などが好評を博したことによって、もし疾病、不具などだけを階級的な見地から切り離して文学に描く風潮が生じるようなことがあれば、警戒されなければならないであろう。私は、この作者の次の作品を、興味をもって待とうと思う。

〔一九三四年十月〕

完

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