TRENDIA CLASSIC

大菩薩峠

中里介山

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「おや、まあ、お前は弁信さんじゃありませんか……」

と、草鞋を取る前に、まず呆気にとられたのは久助です。

「はい、弁信でございますよ。久助さん、お変りもありませんでしたか、お雪ちゃんはどうでございます」

「お雪ちゃんも、無事でいるにはいますがね……」

「なんにしても結構と申さねばなりません、本来ならばあの子は、この白骨へ骨を埋める人でございましたが、それでも御方便に、助かるだけは助かりましたようでございます。お雪ちゃんは、当然ここで死なねばならぬ運命を遁れて、とにもかくにも、無事にこの白骨を立ち出でたのは果報でございました。誰も知らないお雪ちゃん自身の善根が、お雪ちゃんの命を救ったのはよろしいが、かわいそうに、あの子の身代りに死んだ人がありましたね」

「何を言うのです、弁信さん」

炉辺閑話の一座の中では、最も臆病な柳水宗匠が、わななきながら唇を震わせますと、

「はい」

弁信は、おとなしく向き直って、

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