チビの魂
本文約14,900字 ・ 読了時間 約30分
あらすじ(AIが作成しました)
商売で子宝に恵まれない圭子は、ある日、腎臓病を患う父親に引き取られた十歳の少女・咲子と出会う。圭子は少女を養子に迎え入れ、そのてきぱきとした性格に好感を抱く。しかし、少女はトラホームの持病を抱え、大人びた言動や見栄を張る癖、夜尿の問題を見せる。ある朝、少女は寝床を濡らしたまま姿を消す。数日後、救世軍に保護されたことを知るが、引き取りを拒否し、二人の縁はそこで途切れる。
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彼女も亦人並みに――或ひはそれ以上に本能的な母性愛をもつてゐた。間歇的ではあつたが、五年も六年も商売をしてゐたお蔭で、妊娠の可能率が少ないだけに、尚更ら何か奇蹟のやうに思へる人の妊娠が羨ましかつたり、子持の女が、子をもつた経験のないものには迚も想像できない幸福ものであるやうに思へたりしてならないのであつた。子供といへば豕の仔でも好きな彼女であつたので、散歩の途中犬屋の店で犬の子が目につくと、何をおいても側へ寄つて、本当に可愛ゆくて為方がないやうに見てゐるのだし、町の店屋などで綺麗な猫が見つかると、そこで余計な買ひものをしたりして、それは其の場きりのものだけれど、その子供を貰ふ予約をしたりするくらゐだつたから、母親に手を引かれて行く子供を看ると、別にそれが綺麗な子でなくても、ぽちや/\肥つてさへゐれば、蓮見に何とか話しかけて振顧るのであつた。
「あたい一度子供産んでみたい。」
「いや、真平だ。」
「療治すれば出来るといふわ、森元さんが……。」
「その時は相手をかへなけあ。」
子供が産めない躯だといつてゐた蓮見の死んだ妻は、こんなに沢山の子供を次ぎ次ぎに産みのこして、大きくなつてしまへば、経済や何かの問題は兎に角として、感情のうへでは別に何でもないやうなものの、人の赤ん坊を見てさへ、彼はうんざりするのであつた。それに生きてゐるうちに、子供の一人々々は何とか片が着かなければならないのが、普通人間の本能であるらしかつた。子供の運命が自身の寿命と生活力の届かないところへ喰み出ることは、誰しも苦痛であつた。母性愛はそれに比べると動物的なものらしいのであつた。
兎に角圭子は一人の子供をもらふことにしてしまつた。それはちやうど猫の仔か何かを貰ふやうに、いとも手軽なものであつた。