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TORENDIA

偸桃

本文約2,000字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

立春の郡役所で行われた演春の宴席に、一人の男と子供が現れる。男は何も無い場所から物を取ってくる術を披露するよう命じられ、天上の桃を盗むと宣言する。縄を空へ投げ上げて子供を天へ登らせた男は、次々と空から落下する子供の体の一部を拾い集め、笥に収める。悲しむふりをして役人や見物人から葬儀代を募った男は、再び術を用いて笥の中から子供を出現させる。術の正体や白蓮教との関わりを彷彿とさせる不思議な奇術の様子を描く。

蒲松齢

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🎧 偸桃 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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少年の時郡へいったが、ちょうど立春の節であった。昔からの習慣によるとその立春の前日には、同種類の商買をしている者が山車をこしらえ、笛をふき鼓をならして、郡の役所へいった。それを演春というのであった。

私も友人についてそれを見物していた。その日は外へ出て遊んでいる人が人垣を作っていた。堂の上には四人の官人に扮した者がいたが、皆赤い着物を着て東西に向きあって坐っていた。私は小さかったからそれが何の官であったということは解らなかった。たださわがしい人声と笛や鼓の音が耳に一ぱいになっていたのを覚えている。

その時一人の男が髪を垂らした子供を伴れて出て来て、官人の方に向って何かいうようなふりであったが、さわがしいので何をいっているのか聞くことができなかった。と、見ると山車の上に笑い声をする者があった。それは青い着物を着た下役人であった。下役人は大声で彼の男に向って芝居をせよといいつけた。彼の男は何の芝居をしようかと訊いた。官人達は顔を見あわして三言四言いった。そこで下役人が、

「お前は何が得意か。」

と訊いた。彼の男は、

「何もない所から物を取ってくることができます。」

といった。下役人はそこで官人に申しあげた。と、しばらくして命がくだった。下役人は彼の男に向っていった。

「桃を取ってまいれ。」

彼の男は承知して、衣をぬいで笥の上にかけ、物を怨むような所作をしていった。

「お役人様は、物がわからない。こんな氷の張っている時に、どこに桃があるだろう。しかし、また取らなければ怒りに触れる。さて、どうしたらいいかなァ。」

すると彼の伴れている子供がいった。

「お父さんは、もう承知したじゃないか。今更できないとはいわれないだろう。」

彼の男は困ってなげくような所作をしていて、やや暫くしていった。

「よし、思いついた。この春の雪の積んでいる時に、人間世界にどこに桃がある。ただ西王母の園の中は、一年中草木が凋まないから、もしかするとあるだろう。天上から窃むがいいや。」

そこで子供がいった。

「天へ階をかけて昇っていくの。」

彼の男がいった。

「それは俺に術があるよ。」

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