無題(九)
本文約1,400字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
温室の管理をめぐり、石井という男に対して嫌味や矛盾した要求を繰り返す母との生活を描く。娘である「自分」は、金銭や体面に執着し、女中たちや家族に高圧的で理不尽に振る舞う母の姿を冷ややかに見つめる。猫の扱いをきっかけとした対立や、不可解な机の片付けの指示といった日常の出来事を通して、家という閉鎖的な空間における精神的な抑圧と侮辱を綴る。また、他者を一方的に裁くことの危うさと、作家としての自身の未熟さを内省する。
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○温室の石井を呼びつける、
m 真中、右 石井(若い方 うなだれている)、左 石井
草の工合をきいているが 妙にからんで
「昨日よそへ行きましたら、カーネーションがのでんですっかりよく育って居りましたよ さし木をしてねエ、あれは温室でなくても育つと見えますねえ」
石「ずっと野天で生えているのをさし木すれば育ちます、種生はどうも……」
やがて
「奥さん、何かおこのみでこれを育てたいというような花がありましたら仰云って下さい」
「どうも 私どもは素人で一向わかりませんですが、主人がいろいろその方の専門家を知って居りますから……いつか博覧会の時でしたか 温室を専門にやった方で 今ではなかなかそちらの方のオーソリティーだという方を知っているのですが……石井さん、ききませんでしたか?」
「さア、承って居りませんですが」
「もし何でしたら その方にでも伺って見たら又 何とか……」
自分 たまらなくなって
「オーソリティーの問題じゃない」という。
m、きのう小声で「温室の石井ってのもインチキだね」という。
「何故?」
「だって、お前きっちり十二時に来るんだよ 一遍や二度ならだけれど……」
m、金を惜しくなって来た。それを、そうスラリと云わずに
「温室のことで怒ったりしては 彼の意志に反する」とか、又このようなカラミでやる。
つまり石井をことわったらしい。
○mが彼というとき、聞くものは体のどこかを突かれたような感じをうけ、いやで毒々しく感じた。英男とはまるで内容の違う彼 母流の彼(いやみな)を感じ、はずかしかった。
○その午後 バスケットに入れて 猫を貰って来た。
「幸福なところへ行くんだ」
ところが、逃げ出し いくらまってもかえって来ない。
「困ったね」
キク「本当に、お話も出来ませんね」
夜仕事をしていると「ハナレ」
「一寸お話がございますから」と来る。
「猫のことだがね、私の家には猫を飼わないよ、お前の家なら御勝手だが……」
「逃げちゃった」
「逃げたでいいならかまわないがね……」
「それから その机の上を片づけて、テーブルかけを出しておくれ」
何故そのテーブルかけがいるのかわけがわからない。