田原藤太
本文約2,800字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
近江の国に住む武士、田原藤太は、瀬田の唐橋で出会った龍王から三上山の巨大なむかで退治を依頼される。龍王の住む湖底の御殿へ赴いた藤太は、迫り来るむかでの眉間に矢を射るため、唾で濡らした矢を放つという機転を利かせる。見事むかでを退治し、龍王から尽きることのない米俵や絹、そして響き渡る釣り鐘という不思議な品々を贈られた藤太が、その後も豊かに暮らす様子を描く物語である。
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一
むかし近江の国に田原藤太という武士が住んでいました。ある日藤太が瀬田の唐橋を渡って行きますと、橋の上に長さ二十丈もあろうと思われる大蛇がとぐろをまいて、往来をふさいで寝ていました。二つの目玉がみがき上げた鏡を並べたようにきらきらかがやいて、剣を植えたようなきばがつんつん生えた間から、赤い舌がめらめら火を吐くように動いていました。あたり前の人なら、見ただけで目を回してしまうところでしょうが、藤太は平気な顔をして、大蛇の背中の上を踏んで歩いて行きました。しばらく行くと、後ろでだしぬけに、
「もしもし。」
という声がしました。その時はじめてふり向いてみますと、今までそこにとぐろをまいていた大蛇は影も形もなくなって、青い着物を着た小さな男が、しょんぼりそこに座って、おじぎをしていました。
藤太は不思議そうにその男の様子をながめて、
「今わたしを呼んだのはお前か。」
と聞きました。小男はまたていねいに頭を下げて、
「はい、わたくしでございます。じつはぜひあなたにお願いしたいことがございます。」
といいました。
「それは聞いてあげまいものでもないが、いったいお前は何者だ。」
「わたくしは長年この湖の中に住んでいる龍王でございます。」
「ふん、龍王。するとさっき橋の上に寝ていたのはお前かね。」
「へい。」
「それで用というのは。」