物のいわれ
本文約10,700字 ・ 読了時間 約22分
あらすじ(AIが作成しました)
山姥に狙われた三人の兄弟、餅を巡る猿と蟹の駆け引き、ひらめやほととぎすといった生物の姿にまつわる伝説など、日本各地に伝わる「物のいわれ」を収める。動物や自然界の習性、あるいは身体的特徴が、かつての出来事や教訓からいかにして生じたのかを、昔話の形式で一つひとつ描き出す。不思議な由来の物語を通して、身近な自然や生き物への想像力を膨らませる一冊。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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目次
物のいわれ(上)[#「(上)」は縦中横]
そばの根はなぜ赤いか
猿と蟹
狐と獅子
蛙とみみず
すずめときつつき
物のいわれ(下)[#「(下)」は縦中横]
ふくろうと烏
蜜蜂
ひらめ
ほととぎす
鳩
物のいわれ(上)[#「(上)」は縦中横]
そばの根はなぜ赤いか
一
あなたはおそばの木を知っていますか。あんなに真っ白な、雪のようなきれいな花が咲くくせに、一度畑に行って、よくその根をしらべてごらんなさい。それは血のように真っ赤です。いったいおそばの根は、いつからあんなに赤く染まったのでしょうか。それにはこんなお話があるのです。
むかし、三人の男の子を持ったおかあさんがありました。総領が太郎さん、二ばんめが次郎さん、いちばん末っ子のごく小さいのが、三郎さんです。
ある日、おかあさんは、町まで買い物に出かけました。出がけにおかあさんは、三人の子供を呼んで、
「おかあさんは町まで買い物に行って来ます。じき帰って来ますから、三人で仲よくお留守番をするのですよ。戸をしっかりしめて、みんなでおとなしくうちの中に入っておいでなさい。ひょっとすると悪い山姥が、おかあさんの姿に化けて、お前たちをだましに来ないものでもないから、よく気をつけて、けっして戸をあけてはいけません。山姥はいくら上手に化けても、声が、しゃがれたがあがあ声で、手足も、松の木のようにがさがさした、真っ黒な手足をしていますから、けっしてだまされてはいけませんよ。」
といい聞かせました。すると子供たちは、
「おかあさん、心配しないでもいいよ。おかあさんのいうとおりにして待っているからね。」
といったので、おかあさんは安心して出て行きました。
ところがじき帰って来るといったおかあさんは、なかなか帰って来ないで、そろそろ日が暮れかけてきました。子供たちはだんだん心配になってきました。「おかあさんはどうしたんだろうね。」とみんなでいい合っていますと、だれかおもての戸をとんとんとたたいて、
「子供たちや、あけておくれ。おかあさんだよ。お前たちのすきなおみやげを、たんと買って来たからね。」
といいました。