夢
本文約2,300字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
石の階段の先にある大理石の露台、ドイツの兵隊が行き交う桟橋、そしてトレプトウの天文台へ向かう行列。著者が体験した不思議で不気味な三つの夢の光景を綴る。銀の水面が炎に変わり、人間の腕を積んだ自動車が現れ、家畜と凄まじい形相の人々が太陽の下を行進する。論理を超越した幻想的な風景と、そこに漂う終末の予感を描き出し、無意識下で変容し続ける光景の不条理を浮き彫りにする短編である。
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一
石の階段を上って行くと広い露台のようなところへ出た。白い大理石の欄干の四隅には大きな花鉢が乗っかって、それに菓物やら花がいっぱい盛り上げてあった。
前面には湖水が遠く末広がりに開いて、かすかに夜霧の奥につづいていた。両側の岸には真黒な森が高く低く連なって、その上に橋をかけたように紫紺色の夜空がかかっていた。夥しい星が白熱した花火のように輝いていた。
やがて森の上から月が上って来た。それがちょうど石鹸球のような虹の色をして、そして驚くような速さで上って行くのであった。
すぐ眼の下の汀に葉蘭のような形をした草が一面に生えているが、その葉の色が血のように紅くて、蒼白い月光を受けながら、あたかも自分で発光するもののように透明に紅く光っているのであった。
欄干の隅の花鉢に近づいてその中から一輪の薔薇を取り上げてみると、それはみんな硝子で出来ている造花であった。
湖水の面一面に細かくふるえきらめく漣を見詰めているうちに私は驚くべき事実に気が付いた。
湖水の水と思ったのはみんな水銀であった。
私は非常に淋ししような心持になって来た。そして再び汀の血紅色の草に眼を移すと、その葉が風もないのに動いている。次第に強く揺れ動いては延び上がると思う間にいつかそれが本当の火焔に変っていた。
空が急に真赤になったと思うと、私は大きな熔鉱炉の真唯中に突立っていた。
二
私は桟橋の上に立っていた。向側には途方もない大きな汽船の剥げ汚れた船腹が横づけになっている。傘のように開いた荷揚器械が間断なく働いて大きな函のようなものを吊り揚げ吊り降ろしている。
ドイツの兵隊が大勢急がしそうにそこらをあちこちしている。