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TORENDIA

歳時記新註

本文約4,800字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

稲妻、一葉、露、鳩吹、秋分、霧、火鉢、炭といった身近な事象や季節の言葉を題材に、それらの物理的仕組みや科学的背景を解説する。気象現象が起こる熱力学的過程や、古くから伝わる伝説と科学的知見との関連性を紐解きながら、自然界の多様な現象を論じる随筆集である。各項目において、日常的な観察から得られる疑問に対し、物理学や化学の視点を用いて合理的な根拠を示し、生活の中に息づく自然の理を解き明かしていく。

寺田寅彦

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一

稲妻

晴れた夜、地平線上の空が光るのをいう。ドイツではこれを Wetterleuchten という。虚子の句に「一角に稲妻光る星月夜」とある。『説文』に曰く電は陰陽の激曜するなりとはちと曖昧であるが、要するに陰陽の空中電気が相合する時に発する光である。遠方の雷に伴う電光が空に映るのだが、雷鳴の音は距離が遠いのと空気の温度分布の工合で聞えぬのである。稲妻のぴかりとする時間は一秒の百万分一という短時間で、これに照らして見れば砲丸でも止まって見える。あまり時間が短いから左程強く目には感ぜぬが、その実、月の光などに比べては比較にならぬほど強い光である。時としては天の真上で稲光がしてやはり音の聞えぬ事がある、これはブラシ放電と名づける現象で、この時の光の色を分析してみると普通の電光とちがう事が分る。稲妻が光る度に稲が千石ずつ実るという云い伝えがあるが、どういう処から割り出したものであろう。近頃海外では農芸に電気を応用する事がようやく盛んになろうとしているから、稲妻の伝説と何か故事つけが出来そうである。(明治四十一年九月十二日『東京朝日新聞』) [#改ページ]

二

一葉

『淮南子』には一葉落而知天下秋とあるが、植物学者に聞いてみると、木の葉が夏過ぎて落ち散るのは葉柄の根元の処にコルク質の薄い層が出来てそこだけ脆くなるから少しの風にでも誘われて天下の秋を示すものだそうだ。またある人の話によると、落葉樹の葉の中で遅く発育したのがまだ十分成熟しないうちに早い霜に痛んでしまうと、それきり発育が止まって、コルク質の出来る間がなく、梢に枯れたまま淋しい趣を見せるという事である。(明治四十一年九月十三日『東京朝日新聞』) [#改ページ]

三

露

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