本文へ移動
TORENDIA

春山秋山

本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

但馬国の美しい女神・出石少女を巡り、春山の霞男と秋山の下氷男の兄弟神が求婚の競争を始める。母神の助力で藤の花をまとった姿となった弟神は、見事に少女を射止めて家庭を築く。しかし約束を違えて祝福を拒む兄神に対し、怒った母神が呪いをかける。八年もの間、病み苦しんだ兄神がようやく謝罪し、呪いが解かれるまでを描く。

楠山正雄

速度
🎧 春山秋山 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 3

一

むかし、但馬国におまつられになっている出石の大神のお女に、出石少女という大そう美しい女神がお生まれになりました。この少女をいろいろな神様がお嫁にもらおうと思って争いました。けれども少女はお嫁に行くことをいやがって、だれのいうことも聴こうとはなさいませんでした。

この神さまたちの中に、秋山の下氷男と春山の霞男という兄弟の神さまがありました。ある日兄の秋山の下氷男は、弟の霞男に向かって、

「わたしはあの少女をお嫁にもらいたいと思っていろいろに骨を折ってみたが、どうしてもいうことを聴いてくれない。どうだ、お前ならもらえると思うか。」

と聞きました。

「わたしなら、わけなくもらってみせますよ。」

と弟の神が、笑いながらいいました。

「ふん、そんならお前とわたしと、どちらが早く少女をもらうか競争をしよう。もしわたしが負ければ、この着物をぬいでお前に上げよう、そしてわたしの背の高さだけの大きなかめに酒をなみなみ盛って、海山のごちそうを一通りそろえて、お客に呼んでやろう。」

といいました。すると霞男はいよいよおもしろがって、

「ようございますとも。そのかわり万一わたしが負けたら、にいさんの代わりに、わたしがごちそうをしましょう。」

こう約束をして別れました。

弟の神はそれからうちへ帰って、兄神と賭をしたことをおかあさんに話しますと、おかあさんは、

「よしよし、わたしがその賭に勝たせて上げよう。」

とおっしゃいました。

おかあさんはそれから、一晩のうちにたくさんの藤のつるで、着物と袴と、靴から靴下まで織って、編んで、縫って、その上にやはり藤のつるで、弓と矢をこしらえて下さいました。

弟の神は大そう喜んで、おかあさんのこしらえて下さった藤づるの着物や靴を体につけて、藤づるの弓矢を手に持ちました。そして、うきうきうかれながら、野を越え山を越えて、少女の家へ急いで行きました。

楠山正雄の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本