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TORENDIA

猿の顔

本文約540字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

映画に登場する猿の親子と人間の顔の類似性を起点に、生物の進化や加齢による外見の変化から人猿の優劣や賢愚を比較する思考実験を展開する。さらに、財産の多寡や人種、試験成績といった単一の物差しで人間や社会の価値を決定する世間の風潮を例示し、そうした単純化された比較論に潜む危うさと、物事を多角的に考察する必要性を提示する随筆である。

寺田寅彦

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🎧 猿の顔 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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映画「マルガ」で猿の親子連れの現われる場面がある。その猿の子供の方が親猿のよりもずっとよく人間に似ている。しかも、それは人間のうちでも老人の顔に似ている。そうして老翁よりはより多く老婆の顔に似ているのである。それで、人間が非常に長生きをしたらだんだん親猿に似て来るかと思って考えてみる。西洋の絵入雑誌などに時々現われる百歳以上の婆さんなどには実際かなりに親猿のような顔をしたのもあることはある。

動物が年を取るほど高等になると仮定する。そうして一方ではまた、人間が年をとって後にだんだん猿の子供に似て来るとする。すると、もしかしたら、猿の方が人間よりも高等だということになりはしないか。

反対に、猿の方が人間より劣等だとすると、猿も人間も年を取るほどだんだん劣等になるのだという事になりはしないか。

これは顔だけから見た人猿優劣比較論であり、老若賢愚比較論である。

これに似た比較論が世間では普通に行われている。財産の多寡で個人の価値を秤量するのが一つ。皮膚の色で人種の等級をきめようとするのが一つ。試験の成績やメンタルテストで人材登用のスケールをきめようとするのが一つ。経済関係の見地だけから社会制度を決定しようとするのもその一つであろう。

これは考えものである。(昭和八年四月『文芸意匠』)

完

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