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TORENDIA

天然色写真新法

本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

仏国のリュミエール会社が開発した、一枚の板で天然色を再現する新しい写真種板の仕組みと歴史を綴る。リップマンによる光の干渉を利用した複雑な初期の手法や、三色版による重ね刷りの技術を振り返りつつ、澱粉を三色に染め分け、モザイク状に配置した新技術の原理を解説する。光の三原色の特性を利用して、簡易な手順で自然な色彩を再現できるこの発明の有用性と、現状の限界を冷静に分析し、写真技術の進歩を紹介する。

寺田寅彦

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🎧 天然色写真新法 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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今度仏国のリュミエール会社で天然色写真の種板を売り出した。ただ一枚の板で真物同様の色彩が写されるというのがこの種板の優れた特色である。風景なり人物なり、これで撮って適当な薬液で現像すれば蒼い空に浮く雲も、森の緑、野の花の黄紅白紫、ないしは美人の頬の桜色でもすぐに種板に現われるというのは愉快である。

同会社でこの発明に成効しいよいよ種板として売り出す今日までには三年間の苦心をしたという。今この種板の製法より、如何にして原色が写るかという事を述べる前に、先ず従来の天然色写真はどんなものかという事を簡単に御紹介したい。

天然の色彩を写したいという事は写真というものの開闢以来の希望であったが、始めて一つの名案を出して喝采を博したのは仏のリップマン氏である。氏の考案は光がエーテルの波動だという事を基礎としたもので、理論上実に巧妙なものである。そして単に考案を立てたばかりでなく、実際に色の写った写真を撮って当時の耳目を驚かせた。その方法は、一種特別な種板の裏を水銀で蔽い、これで普通写真のように撮影した後現像すれば、種板を通って水銀に当る光線と、それから反射する光とが互いに干渉して種板の薄い膜の中に微細な縞が出来る、この縞の精粗は光の色によってちがう。かくして得た板を適当な方面に照らしてみれば、この縞のために起る光の分散によって原色が見えるというのである。これは大変にうまい法だが難儀な事にはこの種板を作るのがなかなか六かしい。そして強い光でないとよく感じぬ、普通の花や人物でも撮るには非常な長時間かかる。その他いろいろ六かしい事があって普通の人の手に畢えぬ方法である。それでリップマン氏は昨年第二の方法を案出して発表した。その方法も理論上面白い法であるが、出来上がった板をそのまま見るのではなく、かなりに面倒な器械で覗いてみなければならぬので、到底一般には行われそうもない。

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