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TORENDIA

蛇性の婬 

本文約26,600字 ・ 読了時間 約54分

あらすじ(AIが作成しました)

紀の国に住む豊雄は、雨宿りで出会った美しい女性と夢を通じた契りを交わす。やがて彼女の正体が蛇の化身であることを知った豊雄は、僧侶の力を借りて退治を試みる。本作は、人の姿に身を変えて現れる蛇神が人間を惑わす妖異の物語と、許宣という男が白蛇の化身である白娘子と関わり、最終的に法海禅師の導きでその因縁を断ち切るまでの経緯を描く。善悪の狭間で揺れ動く人々と妖異の対峙を通じて、執着が招く愛憎の顛末を綴る。

田中貢太郎

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紀の国の三輪が崎に大宅竹助と云うものがあって、海郎どもあまた養い、鰭の広物、狭き物を尽して漁り、家豊に暮していたが、三人の小供があって、上の男の子は、父に代って家を治め、次は女の子で大和の方へ嫁入し、三番目は又男の子で、それは豊雄と云って物優しい生れであった。常に都風たる事を好んで、過活心がないので、家の者は学者か僧侶かにするつもりで、新宮の神奴安部弓麿の許へ通わしてあった。

それは九月の末のことであった。豊雄は例によって師匠の許へ往っていると、東南の空に雲が出て、雨が降って来た。そこで、豊雄は師匠の許で、傘を借りてかえったが、飛鳥神社の屋根が見えるようになってから、雨が大きくなって来たので、出入の海郎の家へ寄って雨の小降りになるのを待っていると、「この軒しばし恵ませ給え」と云って入って来た者があった。それは二十歳には未だ足りない美しい女と、十四五の稚児髷に結うた伴の少女とであった。女は那智へ往っての帰りだと云った。豊雄は女の美に打たれて借りて来た傘を貸してやった。女は新宮の辺に住む県の真女児と云うものであると云って、その傘をさして帰って往った。

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