悪魔の宝
本文約7,500字 ・ 読了時間 約15分
あらすじ(AIが作成しました)
猟師のセンイチは、ある森で出会った悪魔と取引をし、角や爪、魔法の尾といった悪魔の体の一部を一時的に借り受ける。その力で獲物を自在に捕らえ富を得るが、人の目を避ける生活に次第に疲弊していく。やがて宝ががらくたに変わるという不可解な出来事を経て、姿を消した悪魔との奇妙な契約から解放された夫婦が、平穏な日常を取り戻すまでを描く。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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一 或ところに、センイチといふ猟師がゐました。たいへん上手な猟師でしたが、或日、どうしたことか、何の獲物もとれませんでした。鉄砲をかついで、一日山の中を歩きまはりましたが、小鳥一羽、鼠一ぴきも、見あたりませんでした。
「へんな日だ。今日はだめかな。」
さうつぶやいて、彼は家に帰りかけて、大きな森を通りかゝりました。もう日が沈んで、あたりは薄暗くなつてゐました。
「このおれが、何一つ獲物を持たないで家に帰るなんて、今日はふしぎな日だ。」
そしてぼんやり考へこみながら、森の中を通つてゐますと、何だか、誰かうしろからついて来るやうな気がしました。それで振向いてみると、ちよつとびつくりしました。柄の長い鍬をかついで、黒い着物をきて、大きな帽子をかぶつてる百姓らしい男が、すぐうしろについてきてるんです。
男はいきなり彼に話しかけました。
「お前さんは、どちらから来たんだい。」
「どつちからつて……。」と彼はどきまぎして答へました。「わたしは猟師だ。鉄砲をかついで一日歩きまはつてるので、どつちからつてことはない。」
「ふむ、それでも見たらう。」と男は言ひました。
「何を……。」
「穴を掘つてるのを。」
「穴だつて……。」
「栗の木の下にさ……。」
「栗の木……。」
「わたしが栗の木の下に穴を掘つてるのを、お前さんは見たらう。」
「栗の木の下に穴を掘つてる……そんなもの見やしない。」
「ほんとに見なかつたか。」
「見ないよ。だが、そんなことを聞いてどうするんだい。」
「ふむ、その調子ぢや、ほんとに見なかつたらしいな。」
男はそれきり何とも言ひませんでしたが、やはり彼について来ました。
変な奴だな、とセンイチは思ひました。そして大きな森の中だし、もう薄暗くなつてるし、何だか気味が悪くて、だまつて足を早めました。が男はやはりついて来ます。その様子を、彼はときどき横目でうかがひました。柄の長い鍬、黒い着物、大きな帽子、百姓のやうな様子……。
ところが、森から出て、砂利の道にさしかゝると、その男の足音が変にひゞきました。ちやうど牛か鹿が歩いてるやうなんです。センイチは立ちどまつて男の足をながめました。