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TORENDIA

竜宮

本文約3,500字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

浦島太郎の玉手箱から、海月に騙された猿の機転を描く昔話、さらには吹割の滝の竜宮伝説や、魚の墓場の宝物を巡る怪異譚まで、竜宮にまつわる数々の伝承を紹介する。著者は、これらの虚構が持つ面白さや教訓性に触れつつ、現実的な要素が加わることで逆に嘘らしく感じられる物語の性質について考察を試みる。竜宮という題材を通じ、語り継がれる物語の持つ独特の魅力と虚実のあわいを浮き彫りにする一編である。

豊島与志雄

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🎧 竜宮 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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今時、竜宮の話などするのはちとおかしいが、また逆に、こういう時代だから、竜宮の話も少しはしてよかろう。

竜宮といえば、先ず、「浦島太郎」の昔話が思い出される。これは誰でも知ってるもので、ここに梗概を述べるにも及ぶまい。

ただ、注目すべきは、浦島太郎が竜宮の乙姫様から貰ってきた玉手箱のことだ。あの箱を開けたために、三年の月日が三百年の現実に還り、浦島はよぼよぼの老人になってしまった。然し、もしあの箱を開けなかったら、どうだったであろうか。浦島は永く青春を保ち得たであろうか。或るいは竜宮へまた戻れたであろうか。どちらも疑わしい。

このようなことは、然し、この昔話では問題にしないがよかろう。青春や享楽に対する愛惜として、素直に受け取るべきものであろう。

ギリシャ神話のパンドラの匣、浦島太郎の玉手箱、古人は面白いものを考え出した。

*

竜宮に関する昔話はたくさんあるが、そのなかで面白いのは、「くらげ骨なし」だ。これは、海月がその饒舌の罰を受けることが主題であるけれど、面白いのは他の点にある。この話は柳田国男氏も記述しておられるが、広く知られてはいないから、面白い点を中心にして紹介してみよう。

この話では、「浦島太郎」の乙姫様は、もう竜王の御妃になっている。それから、やはり亀が出て来る。

むかし、竜宮の王様の御妃が、お産の前になって、猿の肝が食べたいと、妙なことを言い出されました。その望みを、どうかしてかなえてやりたいものだと、竜王は考えられて、知恵の多い亀を呼んで、相談されました。

亀は承知しまして、はるばる陸地の方へやって来て、海岸の小山で遊んでいる猿を見つけました。

「猿さん、猿さん、竜宮へ遊びに行かないかい。竜宮には、面白い大きな山もあれば、うまい御馳走もたくさんあるよ。行く気があるなら、わしがおぶっていってあげるがな。」

「なんだって、面白い大きな山が、竜宮にあるのかい。」

「あるとも、あるとも。さあ、わたしの背中に乗りなさい。」

猿はうっかりだまされて、亀の背中に乗り、竜宮見物に出かけました。

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