「草野心平詩集」解説
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あらすじ(AIが作成しました)
草野心平の詩集を解説する本稿は、その作風を自然と人事の調和や、内に抱く遠き夢との表裏一体の関係として論じる。身近な自然から宇宙的な天の背景までを視野に入れ、代表的な「蛙」や「富士山」の詩をはじめ、中国の風土や歌舞伎のような壮大な世界観を描く作品群を八つの区分に収める。孤高の詩人としての歩みと、知性と感性が融合した豊潤な韻律や鮮明なイメージがいかに創造されたかを綴る解説集である。
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草野心平のことを、懇意な人々は心平さんと言う。親愛の気持ちをこめた呼称である。肉付き豊かな大きな顔に、ロイド眼鏡をかけ、口髭をたくわえ、そして蓬髪、とこう書けば、なんだか寄りつきにくい人のようにも見えるけれど、知人を認めるとすぐに、如何にも嬉しげな笑みを浮べ、なつかしげな眼色を漂わすところ、まさに心平さんなのである。その全体の風貌が、物事に拘泥せず、茫洋としている。
だが、その茫洋さのうちにも、おのずからに発露してくる一つの志向がある。道を歩いている時でも、居酒屋で酒杯を手にしている時でも、講演の壇上に立っている時でも、心平さんは、しばしば、いやたいてい、空の一角を凝視するか、地の一隅を睥睨する。そこに、心意の焦点が据えられているのだ。
このことを、単にロマンチックなものだと解してはいけない。内に、或は卑近に、思うことの深ければ深いほど、遠くに夢を追うことになるのだ。言い換えれば、身近かな情感と遙かな夢とが、表裏一体をなす。もとより、それのどちらが表とも裏ともつかない一体だ。そしてどこから突っついても、突っつかれたと感ずる時には、心平さんは徹夜してでも談論風発する。或は詩を作る。
これを、自然と人事と言い換えようか。詩集「大白道」に次のような「序詩」がある。本書(草野心平詩集)に採録しなかったから、少し長いがここに引用しておこう。
自然と人間のなかにはいると。
そのまんなかにはいってゆくと。
かなしい湖が一つあります。
その湖がおのずから沸き。
怒りやよろこびに波うつとき。
かなしみうずき爆破するとき。
わたくしに詩は生れます。
日本の流れのなかにいて。
自然と人間の大渾沌のまんなかから。
わたくしは世界の歴史を見ます。
湖の底に停車場があり。
わたくしは地下鉄にのって方々にゆき。
また湖の底にかえってきます。
なきながら歌いながら。
また歌いながらなきながら。
つきない時間のなかにいます。
詩を作る時のきびしさが、ここにある。詩人のきびしさが、ここにある。だが、心平さんにとっては、このきびしさが辛くはなくて楽しいのだ。泣くのも歌うのも同じことなのだ。そういうところから独特な「蛙」の詩が生れた。