不思議な帽子
本文約4,100字 ・ 読了時間 約9分
あらすじ(AIが作成しました)
大都会の下水道に住む悪魔が、好奇心から街へ飛び出し、小さな犬に化けて賑やかな通りを散策する。しかし、戻るべき下水道の蓋が閉まっていたため、ある帽子屋で帽子に化けて難を逃れる。翌日、紳士に買われた悪魔は、その頭に乗って行動を共にし、やがて空腹から料理を盗み食いする騒動を起こす。最終的に風に煽られて帽子から本来の姿に戻り、人々から追われる中で見つけた下水道の出口から、安堵と共に元の闇の中へと帰還する。
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一
ある大都会の大通りの下の下水道に、悪魔が一匹住んでいました。まっ暗な中でねずみやこうもりなんかと一緒に、下水の中の汚物等をあさって暮らしていました。ところがある時、下水道の中に上の方から明るい光がさしていましたので、何だろうと思って寄ってゆくと、下水道の掃除口が半分ばかり開いているのです。悪魔は何の気もなくその掃除口につかまって、そっと外をのぞいてみて、びっくりしました。街中に明るく燈火がともっていて、大勢の人がぞろぞろ通っていて、おもしろい蓄音機の音までも聞こえています。
「ほほう、まっ暗な汚いこの下水道の上に、こんな立派な賑やかな通りがあろうとは、今まで夢にも知らなかった。何ときらきら光ってる燈火だことか。何と大勢の美しい人間共が通ってることか。何という賑やかさ華やかさだ。下水の掃除人がこの掃除口を閉め忘れてるのを幸いに、俺も少しこの賑やかな通りを散歩してみるかな」
そしてこののん気な悪魔は、下水道からひょいと飛び出して、小さな犬に化けて、街路樹の影をうそうそと歩き出しました。昼のように明るい街路、美しい賑やかな人通り、宮殿のようにきらびやかな店先、うまそうな食物の匂い、楽しい音楽の響き、そんなものに悪魔は気がぼーっとして、いつまでもうろついていました。
そのうちに夜はだんだんふけてきて、人通りも少なくなり、商店の窓もしめられ、賑やかだった街路が淋しくなり始めました。悪魔はふと気がついて、自分が飛び出したあの下水の掃除口のところへ、大急ぎに戻ってゆきました。ところが、いつのまにか掃除人が戻ってきたとみえて、大きな鉄の蓋がかっちり閉め切られています。
「ほい、これはとんだことをした」
そして悪魔は、方々の掃除口を探して歩きましたが、どこもここもみな、頑丈な鉄の蓋が閉め切ってあって、下水道へはいり込む隙間もありません。
「弱ったな。どうしたら下水道へ戻ってゆけるかしら」