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TORENDIA

死刑囚最後の日解説

本文約1,500字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

死刑の判決を受けた一人の男が、断頭台へ送られる最後の日々における肉体的および精神的苦悶を描く。自然が授けた生命を人為的に奪うことへの激しい苦悩を軸に、死刑廃止の主張を展開する。十九世紀の社会が抱える不正義と理想主義の対立を背景に、小説と論説の境界をゆく作品として死刑制度という社会組織への抗弁を綴る。

豊島与志雄

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『死刑囚最後の日』Le dernier jour d'un condamn は、ヴィクトル・ユーゴー(Victor Hugo)の一八二九年の作である。作者は数え年で二十八歳、元気溌剌たる時であって、既に詩集二冊と戯曲『クロムウェル』とを発表して、ロマンチック運動の先頭に立ち、翌三〇年には、戯曲『エルナニ』の公演を機縁とするロマンチック運動の勝利をもたらし、その後あいついで、多くの詩集や戯曲や小説を発表する前途をもっていた。

彼は『死刑囚最後の日』に自分の名前をつけず、無名の者の作として発表した。このことについては、その後一八三二年に彼が公然と仮面をぬいで書いている長い序文を、ここに訳出しておいたから、あらためて何も言う必要はなかろう。この作品が発表された当時、政治や道徳や文学などの見地から、いかに多くの反響を、そして物議を、まきおこしたかは、作者自身が一八三二年に書いている『ある悲劇についての喜劇』という小篇によっても、ほぼ推察することができる。

この『ある悲劇についての喜劇』は、『死刑囚最後の日』の一種の序文みたようなもので、引き離せないものとはなっているが、じつは文学史的研究に役立つだけで、作品としてはつまらないものであるから、私は訳出することをやめた。

『死刑囚最後の日』は人を狂気せしむる作品だと、ある人が言っている。実際そこには、死刑の判決を受けてから断頭台にのぼせらるる最後の瞬間に至るまでの、一人の男の肉体的および精神的苦悶が、微細に解剖され抉剔されている。生きてる首をきらるる、自然から受けた生命を人為的に奪い去らるる、その当人の現実的な苦悶が、熱情をもって叙述されている。そしてすべてが、死刑廃止の主張へと集約される。

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