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TORENDIA

影法師

本文約4,000字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

小さな村の子供たちが、長者の屋敷の白い土塀に墨で自分たちの影法師を写し取って遊ぶ。ある日、現れた髪の長い男の助言により、塀は鏡のように黒く塗りつぶされる。するとそこには、自分たちの動きに合わせて踊る不思議な影法師が浮かび上がるようになる。子供たちはこの黒い鏡の壁を通じ、生きた人間のように動く影とともに愉快な日々を過ごす。作者が子供たちの遊びを通じたふしぎな体験を描いた物語である。

豊島与志雄

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🎧 影法師 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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一

うしろに山をひかえ前に広々とした平野をひかえてる、低いなだらかな丘の上に、小さな村がありました。村の東の端に、村一番の長者の屋敷がありまして、その塀の外の広場は、子供たちの遊び場所でした。

白く塗った土塀、左手はゆるやかな山すそで、いろんな灌木や草がはえています。前には小さな川が流れていて、魚が泳いでいます。川の向こうと右手の方には、たんぼが続いています。子供たちはその広場でおもしろく遊ぶことが出来ました。

晴れた日の朝早く、長者の子供を交えて三四人の子供が、いつものように、そこで遊んでいました。東の地平線から出たばかりの太陽の光りが、皆の影を白い壁にくっきりとうつしていました。その影があまりはっきりしておもしろいので、皆は影うつしの遊びを始めました。

「ああ、いいことを考えた」と長者の子供がふいに叫びました。「待っといでよ、じきに来るから」

そして長者の子供はいきなり駆け出して、うちの中にはいって行きました。

お祖父さんが、大きなまんまるい眼鏡をかけて、縁側で本を読んでいました。

「お祖父さん、僕にあの……東の塀を下さいよ」と子供は言いました。

お祖父さんは、まんまるい眼鏡の下にびっくりした眼を開いて、子供を見ました。

「なに、塀をくれって……」

「ええ、下さいよ。おもしろいことがあるんです。こわしやしません。ただ遊ぶだけなんです。塀で遊ぶんです。ね、いいでしょう」

「塀で遊ぶって……おかしなことを言う子だね。こわしさえしなければよいけれど……」

「じゃあ下さいね。遊ぶだけなんですから」

そして子供はもうお祖父さんの側から駆け出して、部屋の中にはいって、大きな硯箱を持ち出して、またもとの塀の外に駆けてきました。

「何をするの」

待ってた子供たちが集まってきました。

「今ね、この塀をお祖父さんからもらってきたんだ。だから、こわしさえしなけりゃ、何をしたって叱られやしないよ……これから皆の影法師を、この塀の上に写し取るんだよ」

「影法師を写し取る……うん、おもしろいな」

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