支那人間に於ける食人肉の風習
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あらすじ(AIが作成しました)
西暦九世紀の唐代における支那人の風俗を伝える『印度支那物語』を資料とし、支那に存在した食人肉の風習について歴史的な究明を行う。著者は、先行する研究の不十分さを指摘し、唐代の記録やその後の歴史的資料と対照させることで、史実の正確性を証明する。さらに、大饑饉の際に発生した食人の蛮行という暗黒の側面にも触れ、支那人を客観的に理解するためにこの風習の存在を認識する必要性を論じる論文である。
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緒言
一國の歴史を闡明するには、その一國の記録だけでは不足を免れぬ。是非その國と關係深き他國の記録をも、比較參考する必要がある。支那歴史の研究者としては、支那本國の史料の外に、日本、朝鮮、安南等の記録を參考するは勿論、遠く西域諸國の記録をも利用せなければならぬ。兩漢以來、支那の國威が四表に張ると共に、その國情が次第にキリスト教國や、マホメット教國の間に傳はり、又此等遠西の諸國民も極東に觀光して、その見聞を公にした。此等の見聞録の中には支那の風俗世態等に關して、往々本國の記録に見當らぬ貴重な材料を供給するものも尠くない。極東に關係あるギリシア、ラテンの記録は、略 Coeds 氏の Textes d'Auteurs Grecs et Latins relatifs L'Extrme-Orient に備はり、マホメット教徒の記録――その地理に關係ある部分を主としてあるが――は、大體 Ferrand 氏の Relations de Voyages et Textes gographiques Arabes, Persans et Turks relatifs a L'Extrme-Orient に纏められてある。
ギリシア、ラテンの記録は、しばらく措き、マホメット教徒のそれは中々價値が多い。數あるマホメット教徒の記録の中で、その内容の豐かなる點より觀ても、將た又その年代の古き點より觀ても、所謂『印度支那物語』を第一に推さねばならぬ。この物語は前後の二篇に分かれ、前篇は Solayman の記録で、後篇は Ab Zayd のそれである。