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TORENDIA

シェイクスピアの郷里

本文約13,500字 ・ 読了時間 約27分

あらすじ(AIが作成しました)

ストラトフォード・オン・エイヴォンを訪れる文学者は、シェイクスピア祭の季節に仲間と車でロンドンを出発する。英国の牧歌的な風景を楽しみながら、劇作家の生誕地で聖地巡礼の旅路を辿る。宿での滞在や、詩人にゆかりのある品々、かつての恋人アン・ハサウェイの住居を見学し、その生涯に思いを馳せる。本書は、イギリスの歴史ある風景と詩人の遺した足跡を辿りながら、自身の学究的観点も交えてその土地の風土と天才の原風景を綴る紀行文である。

野上豊一郎

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I pray you, let us satisfy our eyes

With the memorials and things of fame

That do renown this city;

――Twelfth Night

一

ストラトフォード・オン・エイヴォンへは、なるべくシェイクスピア祭の季節に行きたいと思っていたところへ、折よく水沢君と工藤君に誘われ、水沢君の車で出かけようということになった。ロンドンからストラトフォードまでは九十マイルそこそこで、汽車で行っても四時間ぐらいなものだけれども、イギリスの田舎はどこも綺麗で公園のようだから、自由のきく車でドライヴすることができたら、それに越したことはないのだ。

時は四月の中旬で、空を見ても樹を見てもなんとなく春めいて来たし、それに私のイギリスでの講義もやっと片づいたし、ローマにいた長男からは大学で講座を持つことにきまったといって来たし、つい二三日前、日本からの便りでは、二男は福岡へ転任して、これも新設の物理学の講座を持つことになるらしく、三男も工学部に入学ができたという知らせがあったので、私たちは久しぶりでほがらかな気持になって旅に出かけられたのであった。

誰かが、ストラトフォード・オン・エイヴォンのことをイギリスのメッカだと言っていたが、少くともイギリス文学をかじってる者にとっては、シェイクスピアの生れた土地、シェイクスピアの骨の埋もってる土地を見に行くのは、回教徒が聖地へ巡礼に出かけるようなものである。私にとっても、これまでたびたびシェイクスピアについて講義をしたこともあり、東京を立つ前には『マクベス』の翻訳を出したばかりではあり、『オセロー』にも手をつけたままで出かけて来たようなわけではあり、何かにつけてシェイクスピアには世話になってるので、かたがたお詣りしなくては義理が立つまいと思われた。

二

その日(十一日)午後二時ごろ、水沢君と工藤君と、水沢君が操縦して、私たちのハムステッドの家に迎えに来てくれた。

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