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TORENDIA

闘牛

本文約8,000字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

スペインへ滞在した筆者は、偶然の機会を得てサン・セバスティアンの闘牛場を訪れる。闘牛士たちが猛牛を巧みに翻弄する華麗な演技に観客が熱狂する一方、牛が次々と殺されていく残酷な光景に筆者は複雑な心境を抱く。競技の合間には闘牛士が牛に突かれる予期せぬ事態も発生し、会場は異様な緊張に包まれる。本作は、スペイン人の情熱の源泉ともいえる闘牛という競技の構造と、そこで展開される命を懸けた人間と牛との格闘を描く。

野上豊一郎

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一

エスパーニャに来て闘牛を見ないで帰るのは心残りのような気がしていた。しかし見るまでは、生き物を殺すのを見て楽しむということがひどく残酷に考えられ、それに対する反感もあって、見なくともよいというような心持もあった。その反感は、私よりも弥生子の方が強く、彼女は闘牛を見たいという好奇心は全然持ってないようだった。私の方はそうではなく、見たくもあるがいやな気がしはしないかという不安で躊躇していた。

ところが、偶然は私たちにそれを見させる機会を与えた。或る朝、私はサン・セバスティアンのヴィラ「ラ・クンブレ」の日陰の涼しいヴェランダで、デッキ・チェアに足を踏み伸ばして、読めもしない西班牙語の新聞の見出しを拾っていた。ドイツがポーランドに侵入してからは、いつどんな事が起るかわからないような気がして、どこへ行っても新聞とラディオの報道を気にする習慣になっていた。それを見ていると CORRIDAS DE TOROS という標題が目に留まった。それが闘牛のことだということぐらいは知っていた。土曜日(八月二十日)からサン・セバスティアンで始まる。仕止役はオルテガとベルモンテ、云々。まだいろいろ書いてあったけれども細かいことはわからなかった。

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