七重文化の都市
本文約13,500字 ・ 読了時間 約27分
あらすじ(AIが作成しました)
カイロは東洋と西洋の要素が融合し、五千五百年にわたる七つの文化が幾重にも堆積して形成された複雑な都市である。本書は、古代エジプト王朝から近代に至るまで、異民族の侵入と支配、そして文明の変遷によって都市の姿がどのように改変されてきたのかを歴史的背景から論じる。また、ニル川沿岸に残る古代の遺跡と対比させながら、現在の回教都市としてのアラブ風俗や建築様式、そして人種のるつぼと化した都市の現状を描き出す。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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Augescunt aliae gentes, aliae minuuntur ; inque brevi spatio mutantur saecula animantum, et quasi cursores, vitae lampada tradunt.
―――Lucretius[#「Lucretius」は底本では「Lucretitus」]
一
カイロの町は、東洋でもなければ西洋でもない謂わば東洋と西洋の奇妙に融合した特殊の外貌を持っていて、旅行者にはたしかに一つの大きな魅力である。殊に私どものように、印度洋の諸港を次々に見物して、紅海からスエズ地峡を抜け、地中海を横断して、西洋の境域に入ろうとする者には、カイロは地理的にも文化史的にもまず見て置くべき都市である。
N・Y・Kの船が夕方スエズに着くと、その以前に船客の中からカイロ観光の希望者を募集してあって、幾台かの自動車に積み込み、徹宵アラビアの沙漠を横断して、翌日カイロの町と博物館とギゼのピラミッドを見物させ、船がポート・サイドに入る頃までに汽車で其処へ落ち合えるようにスケデュールを作る。これは親切な工作ではあるが、エジプト文化のすばらしい御馳走のほんの匂いだけ嗅がせるようなもので、却って充たされない食欲の誘惑となりはしないかの懼れがある。エジプトの古代文化の偉大を知るためには、どうしてもしばらくエジプトに滞在しなければならない。そうして、ニルの沿岸をできるだけ上流へ溯らなければならない。私たちはそのつもりで計画を立てていたから、例の観光団には加入しない、ポート・サイドまでスエズ地峡を船で通った。