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TORENDIA

ヴェルダン

本文約7,300字 ・ 読了時間 約15分

あらすじ(AIが作成しました)

一九三九年初夏、著者の一行はフランスの古戦場ヴェルダンを訪れる。新たな戦雲が漂う不安な情勢下で、二十年前の惨劇の痕跡を辿り、町や城砦、かつての激戦地である砲塁を見学する。本書は、緑が蘇った戦場に自然の生命力を感じつつ、人間の愚かさと繰り返される戦争の矛盾を思索する。さらにランスへの訪問記も交え、過去の悲劇が陳腐化し、新たな悲劇が準備される現代の空虚さと、戦場という場所の特異な性質を冷静に綴る随筆である。

野上豊一郎

速度
🎧 ヴェルダン / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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一

世界情勢の高速度的推移の中には、今ごろヴェルダンの戦場を見物したりすることを何だか Up-to-date でなく思わせるようなものがある。私たちがヴェルダンに行ったのは咋年(一九三九年)の初夏、まだ今度の大戦の始まらないうちではあったけれども、その時でさえすでに現代から懸け離れた一種の古戦場でも弔うような気持があった。ところが、それから二三箇月もすると、いよいよ新しい戦争の幕は切って落され、ヴェルダンを古戦場の如く感じる気持は一層強くなった。

丁度パリに来ていられた姉崎先生をお誘いした時、先生は一九一八年の停戦直後にヴェルダンを訪問されたきりなので、二十年後のヴェルダンがいかに変化しているかに興昧を持っていられるようだった。私たちはヴェルダンは初めてで、ドイツに行っても、イタリアに行っても、フランスでも、イギリスでも、何となしに底気味のわるい空気が漂っていて、いつ戦雲が捲き起らないとも知れなかったので、不安な未来を予想しながら二十年前の世界悲劇の痕迹を踏査することに少からぬ興味を持った。

その日、朝早く、自動車で出かけ、夜に入ってパリに帰りついたのだが、帰りにランスとソアッソンの寺を見ようという計画を立てていたので、ヴェルダンには小半日きりいなかった。それでも自由のきく車で見て廻れたおかげで、遊覧バスなどで見るよりはゆっくり見られた。

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