本文へ移動
TORENDIA

旅行の今昔

本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

鉄道や汽船の普及により文明の恩恵を享受できるようになった現代の旅行のあり方を論じる。かつて俳人や歌人が行ったような苦行的で修業的な旅は、山奥まで文明の光が届く日本内地ではもはや成立しない。現代人は贅沢で安楽な移動を繰り返すだけの「御茶壺」と化し、真の野趣や修業的得益を求めて歩くことは困難であると指摘する。その上で、今日における日本国内の旅行はあくまで遊山であり、真に自然と接し自己の修練を志すなら国外へ目を向けるべきだと綴る。

幸田露伴

速度
🎧 旅行の今昔 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 4

旅行に就いて何か経験上の談話をしろと仰ゃるのですか。

どう致しまして。碌に旅行という程の旅行を仕た事も無いのですもの、御談し仕度くっても是といって御談し申上げるような事も有りません。いくら経験だと申して、何処其処の山で道に迷ったとか、或は又何処其処の海岸で寄宿をしたとかいうような談は、文章にでも書いて其の文章に詩的の香があったらば少しは面白いか知れませぬが、ただ御話し仕たって一向おかしくもない事になりますから申し上げられません。

経験談の代りに「空想談」は何様です?。

旅行も日本内地は最早何等の思慮分別をも要せぬほどに開けてまいりました。で、鉄道や汽船の勢力が如何なる海陬山村にも文明の威光を伝える為に、旅客は何の苦なしに懐手で家を飛出して、そして鼻歌で帰って来られるようになりました。其の代りに、つい二三十年前のような詩的の旅行は自然と無くなったと申して宜しい、イヤ仕様といっても出来なくなったのであります。

幸田露伴の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本