TORENDIA
水
幸田露伴
TORENDIA
水
本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
あらゆる味を引き出す水の重要性を論じる随筆。体内の消化作用や飲食物の生成における水の役割を説き、特に酒や豆腐、茶の風味と水の関係について歴史的な知見を交えて考察する。さらに、日本各地の水の特性や評価、江戸周辺における河川の品質変化に触れながら、優れた水が持つ価値と、先人が抱いた水への探究心を綴る。著者は、古今の文献を参照しつつ、水がいかに人間の感性に影響を及ぼし、文化を育むかを精緻に論じている。
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🎧 水 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ
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一切の味は水を藉らざれば其の味を発する能はず。人若し口の渇くこと甚しくして舌の燥くこと急なれば、熊の掌も魚の腴も、それ何かあらん。味は唾液の之を解き之を親ましむるによつて人の感ずるところとなるのみ。唾液にして存せざれば、五味もまた無用のものたらん。唾液は水なり、ムチンの存在によつて粘きも、其実は弱アルカリ性の水にして、酵素のプチアリンを含めるのみ。此中プチアリンは消化作用の一助をなすに止まり、ムチンは蓋し外物の強烈の刺激を緩和する為に存せりと覚しく、味を解きて人に伝ふるものは、実に水の力なり。体内の水の用是の如し。而して身外の水も亦、味を解きて人に伝ふるの大作用をなす。譬へば青黄赤黒の色も畢竟水の力を得て素を染むるが如し。水無ければ、絢爛の美、錦繍の文、竟に成らざるなり。こゝに於て善く染むるものは水を論じ、善く味はふものは水を品す。蜀の錦の名あるは、蜀の水の染むるに宜しければなり。加茂の水ありて、京染の名は流るゝなり。染むる者の水に藉るも亦大なりといふべし。而して味の水に藉る、亦いよ/\大なり。
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