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TORENDIA

明治文学史

本文約14,700字 ・ 読了時間 約30分

あらすじ(AIが作成しました)

明治維新後の日本の思想と文学の変遷を辿り、その歩みを論じる。封建制から自由を求める激動の初期、回顧的な潮流を経て、言文一致体や翻訳体の模索へ至る過程を描写する。また、田口卯吉や福沢諭吉といった当時の重要人物の思想や役割を評価し、文学が世の中に対して持つべき影響力や事業としての性質について考察を深める。本書は、時代と共に移り変わる日本の精神史と、それに伴う文学的形式の生成と発展の軌跡を明らかにしようと試みるものである。

山路愛山

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序論

飛流直下三千丈、疑是銀河落九天。

是豈明治の思想界を形容すべき絶好の辞に非ずや。優々閑々たる幕府時代の文学史を修めて明治の文学史に入る者奚ぞ目眩し心悸せざるを得んや。

文学は即ち思想の表皮なり、乞ふ思想の変遷を察せしめよ。

封建の揺籃恍惚たりし日本は頓に覚めたり。和漢の学問に牢せられたる人心は自由を呼吸せり。鉄の如くに固まれるものは泥の如くに解けたり。維新の始めに方りてや、所謂智識を世界に求むるの精神は沛乎として抑ゆべからず。天下の人心は飢渇の如く新しき思想新しき智識を追求めたり。其錦旗を飜して東海道に下向し、山の如き関東の勢を物の数とせざりしが如き議政官に上局下局を設けて公議輿論を政治の標準とし、世界第一の民政国たる米国に擬せんとせしが如き政治的冒険の花々しく、恐ろしく、快絶奇絶なりしが如く、当時の思想界の冒険も亦孟賁をして後へに瞠若たらしむる程の勢ありき。若し明治元年より今日に至るまで日本の思想史を分ちて上中下の三となさば其上代は即ち極めて大胆なる、極めて放恣なる、而して極めて活溌なる現象を有する時代にして、加藤弘之氏が「真政大意」を作りて人民参政の権利を以て自然の約束に出でたりと論じ、福沢諭吉氏が西洋事情世界国尽しの如き平民的文学を創めて天は人の上に人を作らずと喝破せしが如き、将又明六社なる者が其領袖西周、津田真道、森有礼等に因りて廃刀論、廃帝論、男女同権論の如き日本歴史に未曾有なる新議論を遠慮会釈なく説き立てしが如き、中村敬宇先生が自助論を飜訳し耶蘇教の洗礼を受けしが如き、皆是れ前例なく先蹤なく、前人の夢にだも思はざる所迄に向つて先づ手を附けし者なり。其勢水の堤を破りて広野を湿すが如く浩々滔々として禁ずべからず、止むべからず。千里の竜馬槽櫪の間を脱して鉄蹄を飛風に望んで快走す、何者も其奔飛の勢を遏止する能はず、何物も其行く所を預想する能はず。

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