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TORENDIA

車引耕介に答ふ

本文約520字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

車引耕介の評論「新劇さびれ戯曲栄ゆ」に対し、新劇興隆の阻害要因を解明せよとの注文に応える。新劇に関心を持つ者にとって謎は既に解明済みであり、現在は目標を見据えて協力体制にあると説く。また、世界的水準への到達という現状認識の甘さを指摘し、かつての派手な時期を隆盛期と見なす誤りを訂正する。現在の新劇を基礎工事のやり直しと位置づけ、その活動のあり方や新劇に対する客観的な見方を論じる。

岸田國士

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十一月三十日の壁評論「新劇さびれ戯曲栄ゆ」を読んで、小生が徒らに空言を弄するやうに思はれては困るから、「世界的水準に迫るのも遠からぬ各戯曲が何故新劇を興隆させることができぬかその謎をハツキリ解け」といふ車引氏の注文にちよつと挨拶をしておく。

第一に、この謎は、もう解かれてゐる。新劇に不断の関心をもつてゐるものなら、もうこれを不思議とは思はないのである。われわれは今はつきり目標を見定めた以上、協力して、この「奇怪な図」と戦つてゐる。

第二に、世界的水準に迫るといふことは、それほど「威勢のいゝ」話ではない。やつと西洋の劇壇へ出しても及第点がとれるといふほどの意味なのだ。それくらゐのものさへ今迄殆どなかつたといふ事実に目をふさげば、話はもうわからないのである。

第三に、現在の新劇がさびれてゐるといふのは、半ば肯定できるが、もう一つの半面を見落した観察である。新劇といふものが、元来、派手な外観を呈してゐてはならぬのに、さうでありすぎた過去の一時期を以て、恰も、新劇の隆盛期であつたかの如く思ふことが誤りなのである。

現在の新劇は、云はゞ、基礎工事のやり直しである。気長に、しかし、安心して待つてゐて欲しい。いや、大に声援して貰へれば一層ありがたい。

完

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