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TORENDIA

拡がる視野

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

戦時下の出版活況を背景に、婦人作家たちの活動の活性化と動向を論じる。過去の困難を経て実力を蓄えた作家たちが、ブラジルや中国、南洋といった新たな土地へ視野を広げる現状を評価する。一方で、題材の拡大に伴う芸術的深度の不足や、時代状況を代表する作品の欠如という課題を指摘し、作家自身の内的世界の成熟と今後の成長に期待を込めて、当時の女性が置かれた転変をめぐる内面と外部環境のあり方を考察する。

宮本百合子

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🎧 拡がる視野 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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最近の二年ほどの間に、婦人作家の活動はかなり活溌にあらわれた。

それにはいろいろ複雑な理由があると思うけれども、第一には、過去十年ほどの間多くの困難を経験しながらそれでも文学はすてずに努力して来ていた婦人作家たちが、文学の技術や生活経験においてその人々なりにある程度に達して来ていたとき、現代文学がめぐりあうようになった深く大きい動揺につれて、婦人作家の存在が一般の活動の裡へ登場して来たことがいわれるだろう。

外部の条件として、インフレ出版と呼ばれるような出版の活況があって、一面ではその乱暴な出版洪水のために、文学は荒らされているのも現実である。婦人作家の文学業績も無責任に商品化されてゆく危険があるのだが、めいめいの心がけによっては、こういう時期をも将来の自分たちの成長のための何かの条件として本当の意味で積極的にいかして行けないものでもないと思う。

これは、この一、二年急に文学を読む読者層がかわって来たという事実とも繋りのあることで、一般に現代の日本の文学が真面目な一展開の時期におかれているとおなじく、婦人作家も、今日或る積極な存在なら、それはとりも直さず次の成長への期待のために慶賀されるべきことなのだと思う。

現在では日本の婦人作家の性格、個性がまだまだ弱い。持ち味というような範囲でその作家は他の作家から自分をわけている範囲だと思う。

題材的には数年前になかった変化があって、例えば大石千代子氏のブラジル移民を描いた小説、小山いと子氏の「オイル・シェール」のような題材のもの、川上喜久子氏の朝鮮を背景とした作品など出ている。そのほか多くの婦人作家たちが、満州、支那、南洋へと見学にも出かけている。

十年前なら、秋の奈良へ行って博物館や法隆寺を見ていた婦人作家たちが、今日は満州だの蘭印だのへ出かける。

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