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TORENDIA

築地座の『ママ先生』

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

友田恭助夫妻が率いる劇団からの上演希望に対し、作者が自身の脚本を託すまでの経緯と演出方針を綴る。配役において俳優本来の資質や年齢と役柄に大きな隔たりがあることを認めつつ、作者はあえてそれを受け入れる。役者の個性を重視し、既存のイメージに捉われず俳優の工夫に委ねることで、新しい舞台表現の開拓を目指す姿勢を示す。また、役作りに際して想像力に頼らずモデルを研究する重要性を説き、新劇の新たな可能性に対する期待を込める。

岸田國士

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🎧 築地座の『ママ先生』 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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友田恭助君夫妻が、私の「ママ先生とその夫」をやりたいと云つて来た。配役は十人のうちから九人を選ぶといふ窮屈千万な方法だが、私は即座にこれを許した。

友田君夫妻は、新劇俳優として既に確乎たる技倆をもつてゐるし、一座の方針もやや私の考へと一致してゐたからである。

元来、この脚本は、私のこれまでのものとは多少行き方が違ひ、演出等も、やりやうでいく通りもあることを私自身認めてゐるので、配役も、可なり自由にやつてみて、案外面白い結果が得られさうにも思つた。

第一、私の頭では、「ママ先生」といふ人物は、すべてに厚みのある、こつてりした女なのであるが、田村秋子夫人は、反対にきやしやな、どつちかと云へば、さらりとした女性であるやうに思はれる。夫朔郎に扮する友田君は、私の描いてゐる人物にやや近い役柄のやうでもあるが、ただ一点、同君のエキスパンシイフなところ(つまり、感情を表面に現はしすぎる傾向)が、この人物の特性を裏切ることになるのである。

それから、女教師の有田道代の役だが、これはわりにむづかしい役で、ナイイヴな掛引を自然に見せて行くためには、余程の老巧さを必要とするのである。

また、未亡人花巻篠子なる女は、年配二十八九歳といふ見当で、実際は、三十以上の女優が少し若造りをしてほしいのである。

以上の二役を振り当てられた女優諸君は、何れも二十歳前後とおぼしきお嬢さんたちであつてみれば、また、何をか望まんやである。

嘱託医尾形といふのが、これまた生活の刻印を捺された四十男であるのに、この役は、二十幾歳の眉目秀麗な青年に与へられた。実に、配役上、最も避けなければならない年齢距離である。

かう云つて来ると、最初から絶望的に聞えるが、私は、それを敢て承認したのである。「よき意志」によつて自作が演じられることの楽しさと、俳優が、自分の役柄にない、又は反した役を演じ活かす例の微妙な力に対する興味とを考へたからである。

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