本文へ移動
TORENDIA

『素人演劇講座』の序

本文約640字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

勤労と娯楽の両立が求められる現代において、かつての遊びとしての性質を失った演劇の現状を分析する。特に、専門家の真似事に過ぎない現在の素人演劇の弊害を指摘し、国民性の陶冶や生活力の培養を目指すための新たな指導方針の必要性を説く。演劇本来の精神を取り戻し、集団生活の喜びを芸術として再構築するために、各界の達識者が意見をまとめ、正しい素人演劇のあり方を提言する一冊の内容を綴る。

岸田國士

👁 1 ビュー
速度
🎧 『素人演劇講座』の序 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

素人演劇が特に近頃盛んになりつゝある理由は、いろいろ考へられるけれども、私は、この傾向の一面として、勤労と娯楽との問題が生産部門に於て真剣に取りあげられつゝあることを見逃し得ないと思ふ。

演劇はもともと職業人の独占すべきものではなく、誰でもこれを観て楽しむと同じやうに、自らも演じてこれを楽しむべき「遊び」の一種であつて、そこには、集団生活のよろこびが芸術の形をとつて現はされてゐるのである。

ところが、演劇本来のさういふ性質が次第に失はれ、これを演ずる専門家が出るに及んで、それが芸術としての完成に向ひはしたが、一方、これを営利事業とするに至つて、勢ひ、堕落の道を辿りはじめたのである。

今日、素人演劇と称せられるものの多くは、いはゆる「玄人の真似事」であり、演劇の真の精神から遠ざかつた道楽に類するものといふ相場がきまつてしまつた。

かういふ種類の素人演劇の横行は、国民生活の健全な建て直しに役立たぬばかりでなく、時局下の士気振興といふ上からも、決して無害とは言ひ難いのであつて、寧ろ、その欲求の拒むべからざるところを正しく見、現実の運動として今後の素人演劇が国民性の陶冶と強靭な生活力の培養とを目標とし得るやう、一つの指導方針を確立しなければならぬ時機に迫られてゐるのである。

政府及大政翼賛会に於ても、既に、これが研究調査にとりかゝつてゐるが、この度、日本文化中央連盟に於て、その道の達識者の意見をひと纏めにした冊子を刊行せられるのは甚だ機宜を得たものである。

二千六百一年 夏

完

岸田國士の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本