日本人のたしなみ
本文約6,200字 ・ 読了時間 約13分
あらすじ(AIが作成しました)
忘れ去られた「たしなみ」の重要性を説き、日本人の生活精神や品位を論じる。日常生活における衣食住や労働のあり方、人と人との関係に触れ、科学性・倫理性・芸術性を伴う生活技術の重要性を提唱する。また、精神的な工夫努力による国力の向上と、祖先が育んだゆかしさと凜々しさを身につけることで、日本人が本来持つべき矜りと国民としての責務を果たすことの意義を綴る。
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「たしなみ」
「たしなみ」といふといかにもありふれた言葉ですが、これが今の日本人に忘れられてゐるやうです。大きな弱点です。これは文学でも経済でも政治でもさうですし、殊に生活の上ではさうです。
「たしなみ」といふことはわれわれが知つてゐなければならぬことを知つてゐることであり、また美しいものを美しいと見、正しいものを正しいと考へるのが「たしなみ」で、「優れたたしなみ」をもつ国民が高い文化をもつ国民といふことができると思ひます。言葉をかへれば高い科学性と倫理性と芸術性をもつ文化が優れた文化なのであつて、闇取引がどうだとか、やれ経済道徳がどうの交通道徳がどうのといふことでは駄目です。「たしなみ」といふものを訓練によつて与へなければならない。これが明治の終り頃から非常に忘れられて来たやうですが、当時西洋から盛んに新しいものがはひつて来て、青年の間に古いものに反抗しようといふ風潮が現れた。そして古い伝統のなかから本当によいものまで失つたやうに思はれます。「たしなみ」がなくなつたのだと思ひます。
親の躾けといふものに対して一番うるさく思つたのがわれわれの時代で、それからは親が我が子に対しても、だんだん何も云はなくなつたといふことが考へられます。
躾けといふことは非常に窮屈な、謂はば行儀作法をやかましくいふことだといふ風に思はれて来たので、躾けといふものに対して戦々兢々としてしまつて、それが青年の伸びる力を抑へつけ、それに堪へきれないといふことが青年を無軌道にしてしまつたのです。