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TORENDIA

街の探偵

本文約4,200字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

事務所の天井裏に仕掛けられた水素ガス発生装置に気づいた帆村探偵は、爆発の危機を察知し同行者を連れて間一髪で脱出する。その後、日本飛行科学研究所で起きたホスゲンガスによる集団中毒事件の調査に乗り出す。帆村は室内で生き残った研究員の証言と現場の状況から、気温差を利用して屋上から重いガスが送り込まれた仕組みを解明し、犯人の企てた巧妙な殺害手法を明らかにする。

海野十三

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🎧 街の探偵 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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キップの装置

『さっきから気をつけていると、コトンコトンと、微かなリズミカルな音がしているね』

と、彼は指を天井の方に立てて云うのであった。

『ああ、僕にも聞えるよ。鼠が居るのじゃないか』

と、僕はこたえた。

『ねずみ? 鼠が音楽家でもあればねえ』

と、彼はニヤリと笑って、

『――あれは天井裏に、瓦斯を発生する装置が置いてあるんだよ』

『え、瓦斯を発生するって、一体なんの瓦斯だい』

『多分キップの装置だろうね。亜鉛を硝子瓶に入れて置いて、その上に稀硫酸を入れるのさ。うまいこと水素瓦斯が出てきてはやみ、やんではまた出てくるんだよ』

『おい帆村。早く云ってくれ。なぜ水素瓦斯の発生装置が天井裏に置いてあるんだ』

と、僕は帆村探偵の腕をつかんでゆすぶった。

その途端に、電話のベルがけたたましく鳴りだした。

僕ははっとした。そして電話機のところへ駈けよろうとしたが、そのとき帆村が、

『おい待て、電話機に手をかけるな』

『ええっ、なぜ――』

『俺の後についてこい。説明はあとでするから――』

というなり帆村は、椅子から立ちあがった。彼の手はその椅子を頭より高く持ちあげた。そしてつかつかと裏口の窓へ近づくと、持っていた椅子をはっしと窓にぶちつけた。

がらがらがらと硝子は壊れる。

『はやく俺につづけ』

と、帆村はその壊れたガラス窓から暗い外に飛だした。

僕はぎょっとした。そして無我夢中に彼につづいて窓からとびだした。全身の毛が一時にぶるぶると慓えたように感じた。帆村は脱兎のように走る。僕もうしろから走った。

百雷の落ちるような大音響を聞いたのは、それからものの五分と経たぬ後だった。ふりかえってみると、さっきいた事務所はあとかたもなくなって、あとには焔々と火が燃えているばかりであった。

『ああ愕いた』

と帆村がいった。

『君が電話へ出てみろ。その瞬間に、あの大爆発が起ったんだ。敵は君がいることを、電話でたしかめようとしていたんだからね。いや全く生命びろいだった』

といって僕の手を強く握った。

後になって、あのときどうしてその爆発が起ると分ったんだと帆村に訊いたところ、彼は涼しい顔をして、

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