『日本人とはなにか』まへがき
本文約3,400字 ・ 読了時間 約7分
あらすじ(AIが作成しました)
雑誌へ連載した文章をまとめた本書は、著者自身の反省であり、同胞へ宛てた手紙である。当り前が通らぬ社会の特異性を問い、病根の摘出を論じる。自身が信じる日本人の再生と成長の力を信じ、一人ひとりが自らの問題として気づき、考え、決意することを求める。さらに、日本人を不可解と考える外国人に対し、同じ人間としての真実を伝えることで、誤解のない理解と人間としての連帯を呼びかける意志を綴る。
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雑誌「玄想」の創刊号から十回に亙つて毎号「宛名のない手紙」といふ題で発表した文章をこゝに一冊の本として出すことにした。
書物の題としては「宛名のない手紙」ではちよつと内容が想像しにくくはないかといふ出版者の意見に従ひ、思ひきつて、「日本人とはなにか?」と露骨な標題をつけてみた。
しかし、これで内容とぴつたり合ふかと云へば必ずしもさうでないのが厄介である。もし仮に標題が内容を正確に示さなければならぬとすれば、こんな風にでもいふよりしかたがない――「日本人にはかういふところがある」と。
さて、私のこれらの文章が雑誌に発表された当時、いはゆる反響といふべきものが相当にあり、私自身も直接間接、いろいろな読者の声を聞くことができた。それは、私にとつて、誡めともなり、励ましともなり、要するに、まつたく無駄なことをしたのではなかつたといふことをはつきり教へられた。
たゞ、今もなほいくぶん残念に思ふことは、これらの文章はあまり不用意に、しかもあわたゞしく書かれたからでもあるが、むしろそれよりは私の貧しい素質に原因する説得力の不足から、本来の意のあるところを十分に尽し得ず、ある人たちには、私がなんのために、誰をめあてに、これを書いたのかさへ、どうやらわかつてもらへなかつたらしいことである。