本文へ移動
TORENDIA

辻久一著「夜の芸術」

本文約370字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

演劇と映画それぞれの本質を執拗に追求める辻久一の評論集を、二つの気まぐれな芸術を真に愛する者の宿命的な姿勢として評価する岸田國士の書評。

岸田國士

速度
🎧 辻久一著「夜の芸術」 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

演劇は黄昏に、映画は未明にある、という意味で、この書の題はわが意を得ている。前者においてともしびをかかげ、後者に於て鎧戸を開く役目を、この著者に期待しても間違いはあるまい。

著者は本書の中で演劇の近代性を裏づける伝統の精神を、映画にあつては、その機械性を支える人間の知能と感覚とを、適確に、執拗に追求めている。現在日本の実情が彼をそこに赴かしめたのである。従つて、その考察の多くは、濃原子時代色と同時に、ある種の偏見に対する不器用な抗議を含み、それは動もすれば性急でしかも迂遠な姿勢とみえることもある。だが、これこそ、最も気まぐれな二つの芸術――演劇と映画――を真に愛するものの宿命的な表情である。

本書において、著者は、その言わんとするところを言いはじめたに過ぎぬ。しばらく耳を傾けて、いささか多弁ながら的を外さぬ主張を、最後まで聴く必要があろう。

完

岸田國士の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本